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中毒の診断 ~ 臨床的診断

中毒の診断 ~ 臨床的診断 家畜中毒

 
 
動物における中毒の診断は例外を除き一般に困難ですが、殊に慢性中毒の場合は一層困難となり「不明な病状のときは中毒をも考えよ」といわれる所以で、これには臨床的、病理解剖的、化学的ならびに生理学的の総合判断を必要とし、特に中毒の原因となった植物の決定には更に植物学、生薬学、薬理学、土壌学などの知識をも要します。
 
 
しかし仔細に検討する時はストリキニーネ中毒のように単に臨床上から判定し得るものもあり、また動物実験の可能なときは案外早く解決される場合があります。
 
 

臨床的診断

 
 
(1)特別の原因なくして突然重症に陥り速やかに斃死したもの、特に飼付後の発症ならびに同時に多数の動物を侵した場合は、急性中毒を疑うべきです。
 
 
ただし、急性伝染病との鑑別が必要です。
 
 
(2)1群の家畜が中毒を起した場合に特異なことは、平常健康で食欲の旺盛なものほど重症を示すことです。
 
 
これは他の家畜より毒物の採食量が多いためで、一見平凡のようですが臨床的には重要な事項です。
 
 
(3)稟告には特に注意し病歴、経過、飼料などの点は詳細に尋ねることが必要で、畜主の些細な稟告から有力な手懸かりを得る場合があります。
 
 
(4)伝染病との鑑別は畜舎あるいは放牧地の形状位置と発生病畜の関係、飼料給与群、移入家畜の有無等に注意すべきは勿論ですが、臨床上体温、熱型、吐物の色、臭気および夾雑物などに留意することが大切です。
 
 
(5)家畜の採食試験を行います。
 
 
すなわち、中毒を疑う飼料を被害動物に試験的に与えると、多くはこれを忌避するもので急性中毒の場合は特に然りです。
 
 
(6)消化器系の症状。
 
 
中毒初期には一般に食欲の欠損、反芻不能、流涎(水銀中毒および黴中毒)などを来し、口唇および顎痙攣(ヒマシ中毒)、咬牙(ウルシ、鉛、食塩中毒)、牙関緊急(ストリキニーネ中毒)、口腔炎(苛性カリ、酸、水銀、黴ならびにタカトウダイ、カラシ、ジンチョウゲ科)、噯気臭(砒素、燐、ネギ中毒)、口腔粘膜の乾燥および嚥下麻痺(ベラドンナ、黴中毒)、絞扼の感、嘔吐、吐血、疝痛(刺戟毒および刺戟麻酔毒)、便秘、鼓脹、裏急後重、下痢、血液、血液性、粘液性、泡沫性で悪臭ある糞、泌乳閉止、黄疸(ルーピン中毒)などを来す。
 
 
(7)神経症状。
 
 
知覚減少、失神、睡眠、眩暈、酩酊(クロロホルム、酒精中毒)
 
 
興奮、不安、驚愕、狂暴(鉛中毒、酒精中毒)
 
 
癲癇、脊髄痙攣(ストリキニーネ、ニコチン中毒)
 
 
促迫運動(綿馬エキス)
 
 
痙攣性筋搐搦、中枢性脊髄性および末梢麻痺(鉛、イチイ中毒)
 
 
衰弱、喉頭麻痺(鉛中毒)
 
 
膀胱麻痺、直腸麻痺、黒内障(鉛中毒)
 
 
瞳孔散大および縮小、知覚亢進あるいは脱失、虚脱等です。
 
 
(8)循環器症状。
 
 
心臓毒(ジギタリス、オモト、スズラン、キョウチクトウ中毒)によるものが主で鼓動の数、収縮拡張の機能等に感作し初期には脈拍の減少、脈量の増大および血圧亢進を見、続いて脈拍減少極度に達し、中毒期に至れば一種固有の不整運動いわゆる心室の蠕動を起し、次いで心室の収縮性静止ならびに麻痺に陥いります。
 
 
したがって心機能に伴い充血、チアノーゼなどがみられます。
 
 
また血液の変化を思わせる所見があれば中毒による炎症部位の広大なことを示すのであるから、赤血球数や白血球の分布調査も必要です。
 
 
(9)体温。
 
 
中毒により多くは体温の上昇を見、殊に胃腸炎を伴うもの(重金属中毒、刺戟毒、黒斑病甘藷中毒)にあっては体温はその侵された範囲と程度に平行して現れるので、現状および予後の判定に極めて大切です。
 
 
(10)腎臓。
 
 
腎臓毒として水銀塩、サルチル酸乃至アスピリン、フェノールまたはリゾール、修酸、クローム塩、亜砒酸、テレビン油、燐、阿片などがあり、全身中毒の一症状として現れるのですが、他の組織に比し、毒物が腎臓において濃厚化されるので侵され方が劇しく、重篤な症状を呈し、無尿または乏尿となります。
 
 
蛋白は一般に軽微ですが、沈渣は円柱および脂肪変性に陥った血球などが現われ、通常浮腫は見ません。
 
 
解剖所見および組織所見は腎上皮の急性変性または壊死で毒物によって軽重があります。
 
 
(11)尿の変化。
 
 
ある毒物は尿に特異な変化をみます。すなわち崩尿(黴中毒)、尿減少、尿の淋滴乃至尿閉、尿毒症、血尿(テルペンチン油中毒)、血色素尿(ニセアカシア、ハヅ、トウゴマ中毒)、褐色ないし緑色尿(石炭酸中毒)、糖尿(モルヒネ、クロロホルム、エーテル、酸化炭素、修酸中毒)などです。
 
 
また尿中に毒成分が移行しその特異臭や螢光により診断を確実にする場合があり、例えばニラ臭、カンフル臭、リコリン中毒尿のようなものです。
 
 
(12)一般症状としては呼吸器の変状、例えば青酸中毒による呼吸困難、黒斑病甘藷中毒による肺炎様症状、発疹、栄養障害、(砒素、鉛、水銀中毒)、流産(麦角、黴の中毒)など注意を要します。
 
 
(13)局所の症状。
 
 
刺戟毒によって生ずる局所変状で、発赤、腫脹、炎症および腐蝕等を主徴として口腔、咽頭、皮膚などに多発し痂皮の特異な色彩によって鑑別し得ることがあります。
 
 
例えば硝酸は黄色、硫酸は黒褐色、塩酸は灰白色、醋酸は白色の痂皮を生じます。

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