リンパ(lymph)
リンパは血液の液体成分が毛細管壁を通過して、組織間隙に滲漏したもので、組織細胞の物質代謝を媒介している。すなわち、リンパはつねに細胞に養素を供給し、一方では、老廃産物を受けて、これを血流中に還流させる。
腸管から吸収された乳糜を静脈まで運搬するのもリンパの役割であり、また血液の供給が行われない角膜、軟骨、角などの栄養をつかさどる。
したがって、末梢の組織に病原菌や毒素が侵入した場合、それらは血行あるいはリンパ行を介して、動物体の局所、または全身にさまざまの影響をひきおこしやすいものです。
リンパ管(lymphatic vessels):リンパ管は中枢神経系、筋線維などを除く全身の各組織間隙にはじまる。
すなわち、毛細リンパ管は不規則な結合をなして互いに交通しながら、次第に集合して、漸次太いリンパ管となり、ほぼ静脈に沿って中枢に向かい、ところどころにリンパ節を経過して、リンパ本管から胸管ductus thoracicusまたは右リンパ本管ductus lymphaticus dexterを経て前大静脈に終わる。
リンパ循環lymphatic circulationは、リンパ管の弁によるリンパ液の逆流阻止作用と、リンパ管内圧の高低(毛細リンパ管に高く、静脈に向かうにしたがい低くなる)および骨格筋の収縮によってうながされている。
リンパ節(リンパ腺)lymph node:リンパ節は結合織に包裏され、その内部は網状すなわち多数のリンパ濾胞からなります。
リンパ節はリンパ球を生成して、静脈に供給するとともに異物を混入したリンパ液がそこを通過する際に、それらを濾過残留させてリンパを清浄化し、体内感染を防ぐはたらきを持っています。
リンパ系造影(lymphography):リンパ管およびリンパ節の疾患の診断・治療時に有用です。とくに悪性腫瘍の場合、近在リンパ節への広がりや転移状況を知り、また手術療法や化学療法および放射線療法の実施にあたって利用されます。
リンパ管を発見するには、patent blue(5~11%)が用いられる。犬の後肢の場合は、趾間の皮下に0.2~0.5ml注射し、数分してからサフェナ静脈に沿って切皮し、青く染まったリンパ管を露出する。
27~30ゲージの注射針を用いて、リンパ管造影剤5~10mlを2~3時間かけて注入しながら、X線撮影を行います。
リンパ管炎(lymphangitis)
動物体の末梢部に病原菌や毒素が侵入するとき、末梢リンパ管を上行してリンパ管に感染をおこし、急性または慢性の炎症を発生することがある。
急性リンパ管炎(acute lymphangitis):一般に末梢の皮膚、粘膜の創傷や染毒創に起因して、細菌、毒素が侵入門戸から上方に向かい、リンパ管が急性に炎症をおこすものをいう。
起因菌はレンサ球菌およびブドウ球菌による場合が多い。家畜においては刺創・踏創・交突・追突による損傷・繋皸・蹄叉腐爛・趾間腐爛・瘭疽・鞍傷・鬐甲腫などの場合に発生しやすく、また腺疫・鼻疽・仮性皮疽においては、その経過中にリンパ管炎を併発する。
急性リンパ管炎の特徴は、原発創における充血・疼痛・硬結にはじまり、次いで上向性にリンパ管に沿って充血・浮腫を伴う索状腫脹が現れる。
この状態は、家畜では皮膚に色素および被毛があるため、人の場合にくらべて発見しにくい。局所の化膿が成熟し、膿瘍を形成するときは結節状の腫脹を呈し、軟化して排膿するものがあります。
なお、急性リンパ腺炎を伴う場合が多く、ときに慢性リンパ管炎に移行することがあります。
治療は、原病の処置および化学療法を行い、局所に対しては、冷罨法をほどこし、膿瘍を形成したものには切開排膿をはかる。
慢性リンパ管炎(chronic lymphangitis):経過の長い局所の染毒創などからはじまって急性リンパ管炎をくり返しているうちに、慢性リンパ管炎に移行することがある。
局所に索状の腫脹やリンパ管壁の肥厚を認め、またフレグモーネを伴って皮下織の増殖をきたし、象皮病を後遺するものがあります。

