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後天性心疾患 ~ 犬糸状虫症

後天性心疾患 ~ 犬糸状虫症 心臓・血管およびリンパ系の疾患

 
 

犬糸状虫症(canine filariasis)

 
 
本症は、犬糸状虫Dirofilaria immitisが、犬の心臓や、肺動脈に多数寄生して循環器や呼吸器系の障害をおこし、重度のものでは、死の転帰をとるものが少なくない。
 
 
従来、日本の犬が短命なのは、この疾患のためといわれています。
 
 
イ)原因:犬糸状虫の住血子虫(microfilaria、長さ250~300μ)を中間宿主である蚊(トウゴウヤブカ、シナハマダラカ、アカイエカなど)が媒介して、他犬に感染(夏季)させる。
 
 
犬の皮膚に感染した成熟子虫(900~1000μ)は、その皮下織、筋膜などの中間発育場所を経て、静脈血行にはいり、右心房室・肺動脈に移行寄生(秋)する。
 
 
この移行した幼虫は長さ3~5cmで、翌春に至り、成虫(15~30cm)に発育する。
 
 
ひと夏に1度あるいは毎年累積して、その寄生が多数におよぶときは、循環障害を招き、容易に本症を発するものです。
 
 
ロ)症状と診断:一般に犬糸状虫症では、右心房・室、肺動脈、前・後大静脈の寄生例が多く、ほとんど異常を起こさないが、多数(100~200匹以上も)寄生するときは、高度の血液循環障害を招き、次のような2つの病型を呈することが多い。
 
 
すなわち、急性型(V.C.S)では、急に元気がなくなり、食欲不振となり、呼吸困難を呈し、心内雑音(三尖弁閉鎖不全)や血色素尿(高度の欝血、喀血)などを現し危険を伴う。
 
 
また、慢性型は、慢性の血行障害に基づき、徐々に心臓、肺、肝・腎などが冒され、元気食欲の不振、貧血、削痩、呼吸促拍、咳嗽、心不全、浮腫、腹水の貯留、水胸、肝硬変などの症状を継発して死の転帰をとるものが少なくない。
 
 
なお、この糸状虫の寄生状況や血行障害像の診断には「X線による心臓血管造影法」や「心臓の超音波断層像」があり、これらは、犬糸状虫症における適応症の診断上不可欠なものです。
 
 
ハ)治療法:糸状虫が右心および肺動脈内に多数寄生している症例に対して、砒素療法を実施することは、かえって死虫による肺動脈塞栓および砒素自体の副作用による危険を招くことがあります。
 
 
このような発症犬に対しては、各種の細密検査を実施した上、それぞれ薬物による対症療法が行われる。特に急性型のものでは直ちに大静脈や右心房・室に寄生する糸状虫を「頸静脈法」によって外科的に摘出して速やかに症状を回復させる必要があります。
 
 
一方、慢性型のものでは、あまり病勢が進行、悪化する前に、糸状虫の寄生状況や心・肺・肝・腎などの異常を早期に発見(診断)して、開胸式の「右心室法」という心臓手術によって各部に寄生する糸状虫を摘出し、血行を改善して寿命の延長をはかる必要がある。
 
 

注:犬糸状虫の駆虫と予防法について

 
 
従来、犬糸状虫の駆虫法としては、血液中のミクロフィラリア(住血子虫)には、アンチモン剤、ジチアザニン剤、ジエチルカルバマジン剤などが用いられ、また成虫の殺滅には砒素剤が応用されてきましたが、ときに薬の副作用や死虫による肺動脈塞栓症などの危険を招くことがあるので、使用にあたり十分な注意が必要です。
 
 
また、犬体内の感染子虫の殺滅は、ジエチルカルバマジン剤(DEC)の長期連続経口投与によりその殺滅が可能となり、夏季感染予防法が確立され、今日広く用いられています。
 
 
一方、近年、ストレプトマイセスから分離された化合物の登場によって、犬糸状虫の予防法すなわち夏季(5~11月)に月1回経口投与法が確立され、この方法が一般臨床に供されている。

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