唾液腺には耳下腺、下顎腺、大舌下腺、小管舌下腺、頬骨腺(犬)がある。耳下腺parotid glandは馬、豚では唾液腺中最大の腺で、導管は耳下腺管(ステノ)parotid duct or duct of Stenoといい、下顎枝内面より下顎血管切痕を回って外面に現れ、頬を貫いて頬前庭にある耳下腺乳頭に開口する。
顎下腺submandibular glandは牛では最大の腺で、往々リンパ節と誤認される。導管は顎下腺管(ワルトン)mandibular duct or Wharton’s ductと称し、舌小帯に沿って、舌下方に開口している。
舌下腺sublingual glandは大舌下腺と小管舌下腺に分かれ、多くの導管が独立して、あるいは集合して舌下に開口している。一般に唾液は、これら3腺の分泌液の混合液で、科学的、機械的、電気的および精神的刺激によって分泌がおこる。
飼料の性状その他によって、その分泌は一様ではないが、馬で1日約40l、牛で50lといわれています。
耳下腺炎(parotitis)
原因:異物などによる唾管の閉塞、あるいは腫脹からの感染、頸輪、ロープなどによる頸部の圧迫による付近組織の炎症の波及、結核、放線菌病、腺疫、上部気道の感染化膿、さらに周囲リンパ節炎の波及によって発生する。
症状:一般に発熱、食欲不振などの全身症状を伴う。急性症は耳下腺および耳下腺管の腫脹および付近組織のフレグモーネ性腫脹、熱痛を帯び、動物は頭頸を伸長し、呼吸困難および嚥下困難を示す。
顔面、眼瞼などにも浮腫が拡がる。膿瘍を形成するものもある。腺の化膿性炎は、通常10日前後で自潰して治癒する。耳下腺管は長く腫脹がのこることがある。
治療法:初期は局所の冷罨法、プリースニッツ罨法をほどこし、急性症状が去ったならば、皮膚刺激薬を用いる。全身症状が著明なものにはサルファ剤、抗生物質の投与を行う。
異物による耳下腺管閉塞の場合は、手術によって異物を摘出する。
唾液腺瘻(salivary fistula)
耳下腺あるいは耳下腺管の損傷によって生ずることが多い。
症状:①外傷によって、唾液腺が損傷をうけると、たえず唾液が組織に漏出して、その創口の閉鎖を妨げ、またしばしば膿瘍を形成し、これが体表に自潰して瘻管を形成する。これを唾液腺瘻という。
②排泄管(主に耳下腺管)の損傷時にも唾液の流出によって容易に瘻管が発生する。これを唾管瘻(下顎腺管、舌下腺管などのものも含む)という。
いずれも皮膚に漏斗状の開口部をみとめ、採食時には唾液の噴出をみる。唾管瘻は唾液腺瘻に比して治癒し難い。
治療法:損傷部の止血、消毒、創縁整理(辺縁切除)に注意し、一時的治癒を期待する。軟飼料を給するか絶食とし、あるいはアトロピンを注射して唾液分泌を減少せしめ、外傷部の迅速な癒合をはかる。
唾管瘻は一般に治癒しにくいが、一時的に他に排泄管口を設けるか、またやむを得ない時は耳下腺体の機能の破壊をはかる。すなわち、腺内にルゴール液を注入し、あるいは導管を切断しないように結紮する。
唾液腺瘻は腺の分泌を減少せしめて導管からの排泄に努める。
