オキシトシン(oxytocin)
下垂体後葉の分泌する子宮収縮ホルモンであるが、医薬品としては合成品が用いられる。
体内動態
ナノペプチドであり、水やアルコールによく溶ける。
一般に注射で用いるが、どの経路でも吸収は速い。粘膜透過性もよく、人体用では鼻腔粘膜噴霧とか口腔粘膜適用の製剤もあります。
消化管経由の適用では無効です。
細胞外液に均一に分布すると考えられている。血中消失は速やかで、t½は1~2分(牛は20分)です。主として肝と腎での分解によって消失するが、妊娠動物の血中には分解酵素が現れる。
薬理作用
子宮と乳腺の平滑筋にはオキシトシン受容体があり、この受容体に結合して平滑筋を収縮させる。その他の平滑筋には殆ど作用しないし、平滑筋以外の組織にも作用しない。
子宮筋の収縮頻度と収縮力を高める。
オキシトシンの子宮収縮作用に対してエストロゲンは促進的に働き、プロゲスチンは抑制的に働く。
乳槽内に貯留する乳の射出を促進する。
臨床応用
陣痛微弱など出産時の子宮収縮不全に用いる。また正常分娩での分娩促進にも用いる。
出産後の乳分泌開始不全にも用いる。乳牛では乳房炎治療における注入剤適用の前処置に用いる。通常搾乳では搾乳前にオキシトシンを投与すると乳量が増加すると信じられています。
オキシトシン誘導体で注射後の作用時間が長い。
エルゴメトリン(ergometrine,麦角アルカロイドergot alkaloids)
麦角はライ麦に寄生する真菌、Claviceps purpureaの保持菌体です。
欧米では家畜の麦角中毒が散発するが、本邦には発生例がない。
化学
麦角には多くのアルカロイドが含まれていますが、全てがリセルグ酸のアミド誘導体です。
リセルグ酸にアミド結合する部分がペプチドであるアルカロイドはアミノ酸型に分類されるが、水溶性が低く、アドレナリンα遮断作用が強い。代表的薬物はエルゴタミンで、人体用医薬品では片頭痛の特効薬として重要です。
リセルグ酸とアミド結合する部分がアミンの化合物はアミン型と呼ばれ、アミノ酸型より水溶性が高い。
代表的薬物はエルゴメトリン(エルゴノビン ergonovine, BP)で子宮収縮薬として用いられる。
体内動態
エルゴメトリンは経口投与後の吸収が速やかかつ完全であり、単胃動物では1時間後には血中濃度が最高になる。
子宮収縮作用は経口投与後数分で現れる。
肝での代謝(主として酸化)によって消失する。
薬理作用
子宮平滑筋に直接作用して収縮頻度と収縮力をたかめる。
用量が高いと収縮が大きくなるが収縮頻度は低下する。
出産直後の子宮が最も感受性が高い。末梢血管収縮作用があるので、産後の子宮粘膜出血には特に有効性が高い。(出産後の子宮収縮、止血には有効(プロストグランジンEも))
臨床応用
産後の子宮収縮、出血治療に用いる。
出産時の子宮収縮薬として用いるのは適切ではない。
妊娠後期の子宮平滑筋に対してβ₂作動薬が強力な弛緩作用を示す。そこで特異的β₂作動薬で作用持続性のクレンブテロール(clenbuterol)が出産停止薬として欧米で用いられている。
主な使用目的は夜間分娩の停止であり、注射投与によって出産を翌朝まで遅延させる。
使用対象動物は牛と豚ですが、豚では数匹が生まれたあとでも後続の出産を停止させることができる。また、通常分娩でも子宮頸部の通過困難は死産の原因になるのでβ₂作動薬によって防止する方法も研究されています。

