麻酔前投与薬とは全身麻酔の直前に投与される麻酔強化薬や副作用拮抗薬です。全身麻酔では無意識・鎮痛・低反射・筋弛緩が要求されますが、現在用いられている全身麻酔薬で以上の条件を全て満足し、十分な麻酔強度と安全性のある薬物はない。
したがって目的とした治療が支障なく実施できるように他の薬物を併用します。
全身麻酔の対象になる動物は一般に健康状態が不良であるから、全身麻酔の程度を必要最小限に止めることが望ましい。
このためには各種の薬物を併用してなるべく深度の浅い麻酔で目的が達せられるような方法を用いる。このような麻酔法を平衡麻酔法(balanced anesthesia)という。
基礎麻酔薬(basal anesthetics)
麻酔の導入を容易にし、主麻酔薬の投与量をなるべく少なくする目的に用いる薬物で、フェノチアジン系精神安定薬(クロルプロマジン)が主として用いられる。
その使用によって、①手術前の動物を従順にし、②麻酔薬用量を半減させ、③心室細動を予防し、④導入時と術後の嘔吐を防止する。
鎮痛薬
鎮痛が不十分であればオピオイド鎮痛薬やキシラジンを用いる。
軽麻酔ではプロカインなどの局所麻酔薬を併用することもある。
分泌抑制薬
気道や唾液の分泌亢進による副作用防止にアトロピンが用いられる。
この薬物は迷走神経性の徐脈や不整脈の防止にもなる。
馬と牛では術後に胃腸障害の原因になることがあります。
筋弛緩薬
筋弛緩が不十分であれば、d-ツボクラリンやパンクロニウムを用いる。
ただし手術中に必要に応じて投与されることが多い。
また倒馬にはグアイフェネシンを用いる。
予備麻酔薬
気管内麻酔ではチオペンタールのような極短時間型の静注麻酔薬で先ず麻酔して気管チューブを挿入してから吸入麻酔に移行する。
予備麻酔薬は基礎麻酔薬をも兼ねる。
