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ヒスタミンとその拮抗薬

オータコイドと抗炎症薬

 
 
体内ヒスタミンは過敏症の媒介物質であり、また胃分泌の支配物質だと考えられており、その拮抗薬が過敏症疾患や消化器潰瘍の治療薬として用いられている。
 
 

ヒスタミン(histamine)

 
 
ヒスタミンは必須アミノ酸であるヒスチジンの脱炭酸によって作られる。
 
 

●体内動態

 
 
ヒスタミンは水溶性が高く、有機溶媒への溶解性が低い。したがって粘膜バリアの通過性は悪く、経口投与では吸収率が低いし、吸収されても小腸粘膜上皮や肝の通過によって分解されてしまうので、全身循環には殆ど入らない。
 
 
注射投与では全身に分布するが、脳脊髄には分布しない。
 
 
体内変化にはメチル化によって不活化する経路とジアミン酸化酵素によって不活化する経路がある。ヒトではメチル化が主要経路であるが実験動物の成績では種差が大きい。
 
 
家畜に関する情報は殆どない。
 
 
いずれにせよ、体内消失速度はどの動物種でも速やかです。
 
 

薬理作用

 
 

●受容体

 
 
組織のヒスタミン受容体には2種類あり、一つはH₁受容体でジフェンヒドラミンなどのH₁拮抗薬によって競合的に拮抗され、他の一つはH₂受容体でシメチジンなどのH₂拮抗薬によって競合的に拮抗される。
 
 
ヒスタミンの生体に対する作用の多くはH₁受容体作動性作用であり、H₂受容体の作動性作用のうち生理的に重要な作用は胃液分泌促進作用です。
 
 

●循環系

 
 
ヒスタミンは循環系の最末梢へ最も強く作用し、一般に毛細管の透過性の増大による血漿の漏出と毛細管の弛緩による血液の貯留と表現される。
 
 
ヒスタミンは先ず細動脈を弛緩させるので、毛細管とそれに続く細静脈への流入血液量が増加して貯留する。
 
 
毛細管や細静脈は一層の内皮細胞と基底膜から成りますが、血液の貯留によって太くなり、また内皮細胞がヒスタミンの作用で収縮するので、細胞間の結合がルーズになる。
 
 
このために血漿が漏出し、白血球がアメーバ様運動によって血管外に移動し易くなる。元来、基底膜は物質や細胞を自由に通過させる。これらの変化は毛細管より細静脈で顕著です。
 
 
以上の反応の為に、ヒスタミンの注射投与によって皮膚の紅潮、血圧低下、血液水分の血管外漏出の増加、体温低下が起こる。
 
 
大量の投与によってはショック(ヒスタミンショック)を発症し、血圧は極端に低下する。
 
 
この状態ではヘマトクリット値が50%も増加するので血中水分の約半分が血管外に漏出したことになり、また残った血液も末梢に貯留する。
 
 
この状態は外傷・術後ショックやアナフィラキシーショックに類似する。
 
 
ヒトの皮膚に微量のヒスタミンを皮内注射すると局所に三重反応(triple response)が観察される。これは①投与後数秒内に注射部位が発赤し②その周囲が浮腫状態になり、③さらにその周辺がゆっくりと瀰慢性に発赤する反応であり、蕁麻疹と類似する。
 
 
①、②の反応は毛細管に対する弛緩作用と透過性増大による反応であり、③は知覚神経末梢刺激による局所反射で、痒感を伴う。
 
 

●脈管外平滑筋

 
 
一般にはほとんどの平滑筋に対して強い収縮作用を示す。モルモットは特に高感受性で、微量のヒスタミンの注射によって強力な気管支収縮が起こり、呼吸不能の状態で死亡する。
 
 
この症状は喘息に類似する。またモルモットの摘出平滑筋(回腸など)もヒスタミンの極めて低い濃度によって収縮する。
 
 

●外分泌腺

 
 
胃腺、膵外分泌腺、唾液腺などの消化液分泌を亢進させる。特に著明な反応は胃液分泌亢進であり、ヒスタミン注射直後から、数十分間継続して亢進する。
 
 
またヒスタミンの徐放性製剤を作製して動物に皮下注射すると胃潰瘍が発生する。
 
 
ヒスタミンの胃液分泌促進作用では分泌水量、塩酸ともに多くなる。
 
 
ペプシン分泌量は動物種によって一定しないが一般には亢進する。
 
 

●痒覚・痛覚

 
 
ヒトの皮内に極微量のヒスタミンを注入すると強い痒みを感ずる。体内ヒスタミンは多くの皮膚疾患での痒感の原因物質だと考えられています。
 
 
またヒトの皮下に微量を注入すると強い痛みを感ずる。しかし量的関係からは体内ヒスタミンが局所発痛物質である可能性は低い。
 
 

生体内ヒスタミン

 
 

●生成

 
 
生体内のヒスタミンは貯蔵部位でヒスチジンから生成される。食・飼料中にはヒスタミンが含まれているし、また食・飼料由来のヒスチジンから腸内細菌によってヒスタミンが形成される。
 
 
したがって腸内容とか反芻胃内容には常に高濃度のヒスタミンが含まれているが、これらのヒスタミンが吸収されて体内ヒスタミンになることはないと考えられている。
 
 
一部の食中毒学者は、一部の魚の肉には遊離ヒスチジンが多く、プロテウス菌などが汚染すると腐敗する以前にヒスタミンが生成されるのでアレルギー性食中毒の原因になると主張しているし、また馬の蹄葉炎はカビ変敗飼料中のヒスタミンが原因で発症するとの説もある。
 
 
しかしこれらの学説も薬理学的には疑問が持たれる。
 
 

●分布

 
 
内因性ヒスタミンは全身に分布するが、皮膚と胃粘膜に高濃度に分布している。
 
 

●種類

 
 
生体内ヒスタミンの大半は好塩基性細胞に含有されている。即ち組織の肥満細胞や血中の好塩基球に含まれ、肥満細胞性ヒスタミンと総称されている。
 
 
ヒスタミンはその他の細胞にも含まれるので、この部分を非肥満細胞性ヒスタミンと呼んでいる。皮膚のヒスタミンの殆どは肥満細胞性であり、胃粘膜のヒスタミンの約半分は非肥満細胞性です。
 
 

●生理的役割

 
 
胃液腺のヒスタミンは分泌細胞の間に散在する嗜銀細胞から分泌され、細胞壁に働いて胃酸分泌を促進する。嗜銀細胞からのヒスタミン分泌は①迷走神経興奮②ガストリン、③ムスカリン作動薬によって促進される。
 
 
胃液の分泌支配ではヒスタミンが中心的役割を演じていると言われているが、①ガストリンやムスカリン作動薬も壁細胞への直接作用によって胃酸分泌を促進するし、②迷走神経興奮は幽門部のガストリン分泌を促進するので全体像はかなり複雑です。
 
 
中枢神経系内におけるヒスタミン作動性神経はそのH₃受容体とともに注目されているが、中枢神経系全体における意義は高いとはいえない。
 
 

●病理学的役割

 
 
アレルギー、アナフィラキシー、胃潰瘍、牛の第一胃麻痺のような疾病の症状媒介物質としての役割が主張されている。
 
 
これらは①ヒスタミンによって同様な症状が再現される、②これらの疾病に対して抗ヒスタミン薬が有効であるなどの試験結果を論拠としている。
 
 

●ヒスタミン遊離物質

 
 
肥満細胞に結合型として存在するヒスタミンを遊離させる代表的な薬物としてCompound48/80が知られている。その他、ツボクラリン、モルヒネ、アトロピンなどの塩基性薬は大量投与によってヒスタミンが遊離される。
 
 
高分子薬物のデキストラン(ヒト、ラット)、ポリビニールピロリドン(犬)、Tween80(犬)も動物種によってはヒスタミン遊離作用を示す。これらの高分子薬物は比較的高濃度で大量注射されるので副作用の原因になることがあります。

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