亜鉛・性状
金属亜鉛は種々の鉱石例えば炭酸亜鉛(菱亜鉛鉱)ZnCO₃、硫化亜鉛(閃亜鉛鉱)ZnSなどを焼いて酸化亜鉛に変えた後、炭素と混ぜ熱して蒸溜するか、または硫酸で浸出し硫酸亜鉛の水溶液とし電解して作ります。
亜鉛は青白色の結晶性金属で冷時は脆いが、120~150℃に熱すれば延ばして板となしその後は冷えても撓性があります。
空気中で青白色の焰を挙げて燃え酸化亜鉛に変ります。また乾燥した空気中では変化しませんが、湿った空気中では酸化され塩基性炭酸亜鉛3MgCO₃・Mg(OH)₂・3H₂Oを生じます。
これは質が密で内部まで銹るのを防ぎます。
亜鉛は両性物質として作用し酸に溶けて水素を発生し、また粗製亜鉛が酸に侵され易いのは鉛や鉄を含むによります。
アルカリにも溶け亜鉛酸性を生じ、アンモニア水には徐々に溶けて錯化合物を作る。
Zn + KOH + H₂O = KHZnO₂ + H₂
Zn + 4NH₃ + 2H₂O = Zn(NH₃)₄・(OH)₂ + H₂
亜鉛は板として用いまた亜鉛鉱鉄板の製造や合金、電池などに用途がおおい。
(1)酸化亜鉛(亜鉛華)ZnO
亜鉛または塩基性炭酸亜鉛を焼いて造り、冷えると白色となり、水には不溶解ですが、酸には溶け易い粉末です。
白紛ペンキとし亜鉛華澱粉や亜鉛華軟膏として医薬に供する。
(2)硫酸亜鉛(皓礬)ZnSO₄・7H₂O
無色稜柱状結晶物で嫌うべき味があります。
眼薬あるいは木綿の染色剤とします。
(3)塩化亜鉛 ZnCl₂
白色の粉末で酸性を呈し大気により潮解し水に溶かすと加水分解して塩酸を生じます。
科学上脱水剤としまた溶液を木材の防腐剤とします。
ZnCl₂ + H₂O ⮀ HCl + Zn(OH)Cl
亜鉛は銅より毒性が少いが、酸性の飼料を亜鉛の器具に久しく保存して中毒することがあります。例えば醋酸亜鉛中毒など。
毒性のある亜鉛化合物としては酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛竝に醋酸亜鉛Zn(C₂H₃O₂)₂です。
農業薬剤として硫酸亜鉛ZnSO₄・7H₂O、亜鉛石灰液(亜鉛ボルドー液)があり、これは硫酸亜鉛を用い石灰乳中に加えて製します。
亜鉛ボルドー液の殺菌作用はZnイオンに基き薬害作用は緩慢なため桃、梅などにも適用します。亜鉛ボルドーの濃度はふつう次の通りです。
硫酸亜鉛450g、生石灰450g、水72~108ℓ