ヤマドリの特性
台湾のミカド雉、支那南部に産する尾長雉とカラヤマドリ等にヤマドリは近縁で、日本雉と共に日本特有の鳥です。
古くから欧米にも愛好者があり、国際的に非常に高価になっております。
ヤマドリと日本雉は日本の象徴です。日本雉の繁殖者は沢山あるのですが、ヤマドリの繁殖者は非常に少ないのです。
猟友会等猟鳥関係者は此の鳥の繁殖を試みておりますが、中々上手く行かないようです。此れはヤマドリの繁殖が難しい事を意味するのですが、ヤマドリも卵は沢山採れるのですが、無精卵の事が多いのです。
又自然界での捕獲も日本雉より、ヤマドリの方が難しいです。
自然界ではまだまだ日本雉やヤマドリは沢山おり、日本の重要な猟鳥の一つです。
ヤマドリについて逸話があります。
それは、今から約120年前にペリー提督が下田へ上陸した時に一行の中にハイネという人がおり、此の人は下田の背後の山で初めてヤマドリを発見して、太陽の光に輝くヤマドリの褐色はハチドリより美しいといったのでしたが、此の話は後に書かれた、J.カシンという人の著書の中に書かれています。
此のヤマドリはウスアカヤマドリであった事でしょう。
ヤマドリには次の5種がありますが、此の識別は困難な場合があります。
●ウスアカヤマドリ Pacific Copper Pheasant
●シコクヤマドリ Shikoku Copper Pheasant
●アカヤマドリ Soemmering Copper Pheasant
●コシジロヤマドリ Ijima Copper Pheasant
北緯35°10′から北の方へはヤマドリのみが産します。
此のヤマドリが数において一番多く、他の4種のヤマドリを圧しています。
九州の南部には最も美しいと言われておりますコシジロヤマドリがいます。コシジロヤマドリのことを外国では、Ijima Copperといっておりますように、飯島魁博士の名が学名に発見者として出ております。
シコクヤマドリやウスアカヤマドリは黒田長札博士が発見されたものです。
羽色は北方程色が浅く、南方程色が濃く、また赤味が強いです。
又羽における斑点にも少し相違があります。
此の相違は其の産地における気候風土の違いから生じたものでしょう。雄について北方と南方と比べますと、北のほうが尾が短く幅が狭いです。
南方のヤマドリのほうがはるかに長い尾を持っております。
日本雉と比べれば、長い尾がヤマドリの特徴となります。然し、此の5種の中間体もあり、識別は必ずしも容易ではありません。特に雌においてそうです。
ヤマドリの飼育・繁殖
繁殖のポイントは禽舎を広くとり、雌雄を平素は別々に飼っておき、交尾の時だけ一緒にする様にすれば解決します。
禽舎は縦3.6m、横1.8mとし、縦に中央から仕切りを入れて2つに区切り、此の中央仕切りに扉を付けます。此の両側に雄と雌を入れます。
産卵は夕暮れ時と定まっておりますから、卵を産んだ夜から中央仕切りの扉を開いて雌雄が合一出来る様に致します。
交尾は早朝に行うに定まっておりますので、翌日正午頃に再び中央仕切りの扉を閉ざします。隔日に産卵をする場合は扉も又隔日に1回開く事になり平素は雌雄分離して飼う事になります。こうして最も難物とされている腰白ヤマドリの繁殖に成功しました。
飼料成分も大切で、一般雉類に対する餌に繁殖期の1ヶ月前から魚粉を10%多く与え、さらに卵黄、ビスケット粉末、ミルワームを添加致します。
ミルワームは有精卵を産ませるのに最も決定的ですが、入手できない場合は蚕蠶粉も大変結構です。
沢山卵を採ったが、皆無精卵であったというのは飼料中にビタミンB12が不足しているからで、此れを補充すれば有精卵を沢山産みます。飼料に保健剤として、テラマイシン、ビタミンの混合物であるテラエッグを2羽について0.2gを毎日添加すると結構です。
ヤマドリは4月から産卵を始め6月迄、隔日に1個ずつ全体で20~30個の卵がとれ、雛は10羽前後がとれるでしょう。卵の大きさは4.6cm x 3.5cmで目方は25g位、色は僅かに茶色を帯びていますが、白色です。