
これは普通の牛とは属が違って、牛属ではなく、水牛属に属しています。したがってこれは牛にくらべると染色体の様相が異なります。
例えば、台湾水牛は精祖細胞において染色体は2n=48で、このうち8個すなわち4対はV型、40個は棒状ですが、ホルスタイン、インド犎牛、韓牛などは2n=60で、全部棒状で、V型はありません。
また、血液の血清蛋白質を材料として、沈澱反応によって血清学的に類縁関係をみると、ホルスタインや黄牛には、水牛にない特異な血清蛋白質があります。
水牛の原産地はインドです。
水牛は大きく分けて、インド水牛とアフリカ水牛とに分けることができます。後者はさらに赤水牛または短角水牛(Bubalus brachyceras GRAY)と黒水牛(Bubalus caffer Sp.)とにわけることができます。
ふつう水牛といっているのは、インド水牛およびその系統に属するものです。役用が主ですが、イタリアとインドにはとくに乳用として育種されたものがあります。
すべて選抜によって作出されたものです。
水牛の外観
毛色はふつう灰色または灰黒色ですが、まれに全白のものもいます。
一般に被毛があらく短くて、前軀にやや密生していますが、後軀には疎生し、ときには全く被毛のない場合もあります。
体格は一般に粗大ですが、なかに小型のものもいます。台湾水牛の大きさを例示すれば体高、雌125cm、雄131cm、体重、雌430kg、雄470kgぐらいです。
フィリピンの在来水牛をカラバオ(Carabao)といいますが、これは台湾水牛よりやや小さい。体型は牛に比べれば体幅と体深にとみ、体長に乏しい形、すなわち縮んだ(つまった)型をしています。
前軀がよく発達し、前がちのものが多い。顔が細長く、顎がとくに細く、また角が太く長いことなどが目立ちます。角形も独特で、基部は圧扁して三稜形を呈し、外後方に向かって半円状に彎曲しています。
一般に中軀はよい。後軀は短く、甚しく傾斜しています。肢の管は太く、蹄は大きい。
能力
体質強健で、特に耐熱性にとみ、熱帯・亜熱帯での重要な家畜です。粗放な飼養管理に耐え、しかもピロプラズマ病のような風土病とか、牛疫(ペスト)に対する抵抗力が強い。
タイ、ビルマなど南方地城のものは役用であり、水田および畑地の耕作、貨物の運搬に用いられます。また前述のようにイタリアとインドには乳用のものがいます。
イタリアの乳用のものは小型で、その乳から作ったチーズは重要な食品となっています。インドの乳用水牛の代表的なものは、ムラー(Murrah)という品種で、後軀が良く発達し、乳房も大きい。
角が他の品種と異なり、基部が扁平で、先端がまきあがっています。毛色は一般に黒ですが、褐色が好まれます。
1か年の乳量は1,500~2,000kg、乳脂率は7.6%、乳に特異な臭気があります。
生乳で飲む以外にインドではギー(Ghee)という一種のバターを造ります。南方地城は練・粉乳の不足している場所ですから、将来は水牛乳をもっと増産すべきでしょう。
水牛の肉は暗色をおび、肉の繊維があらく、ジャコウ様の一種の臭味があります。また、缶詰用に利用されています。
性成熟は遅く晩熟で、雌は生後24か月ぐらいから繁殖に供せられます。
分布
インドを初め、ビルマ、タイ、東インド、ラオス、カンボジア、フィリピン、華南、華中、台湾、沖縄などに分布しています。
主として水田の多い地方に拡がっています。なお、アフリカ水牛はアフリカ各地に分布しています。