トリパノソーマ症(症状・予防) ~ 病原性は動物の種類によってかなり異なる



家畜に寄生するトリパノソーマのなかで疾病の原因になるものは、Stercorariaに属するものではT.cruziだけですが、Salivariaに属するものには多くの種類があります。


トリパノソーマは一般に宿主範囲はかなり広いが、病原性は動物の種類によってかなり異なります。

●ナガナ病(nagana)・ツェツェ病(tsetse disease)


ツェツェバエによって媒介される疾病で、流行はツェツェバエの分布するほぼ北緯14度から南緯29度の熱帯アフリカにみられます。


馬、犬ではT.bruceiの感染により激しい発病がみられ、貧血、間歇熱、衰弱、削痩、四肢・下腹部の浮腫、肝・脾腫、神経症状、結膜炎、角膜炎から角膜混濁、失明などの症状が現れます。


治療しなければほとんどが感染後数週間以内に死亡します。T.bruceiは牛、豚にも感染しますが病原性は軽度であり、慢性経過をとり死亡率も低い。


めん羊、山羊では感染しても潜在性に経過します。


牛、めん羊、山羊では、T.congolense、T.vivaxの感染により激しい発病がみられる。T.congolenseでは感染後、4~5週間で発病し、急性、亜急性に推移して約2~3週間の経過で死亡例も出る。


症状は間歇熱、貧血、浮腫、悪液質など消耗性疾患の状態が一般にみられます。T.congolenseは馬にもかなりの病原性がありますが、犬、豚には軽度の病原性をもつにすぎません。


豚ではT.simiaeの感染により激しい発病がみられ、急性経過をとり数時間から数日で死亡します。症状は間歇熱、貧血、リンパ節腫脹、肝・脾腫、浮腫、神経症状などです。


●スーラ病(surra)


T.evansiを原因とし、馬、ラクダに激しい発病をみる。犬にもかなり病原性がありますが、牛、めん羊、山羊には病原性は軽度です。


T.evansiはアブ、サシバエ、シラミ、シラミバエなどによって伝播され、北アフリカ、中・南アメリカ、アジア、中国南部に流行がみられます。


解剖的変状や症状は、ナガナ病に類似しており、発熱、貧血、削痩、悪液質、浮腫、リンパ節腫脹、脾腫、後軀麻痺、脳症状などの神経症状がみられます。


馬は死亡率が高く、犬にもしばしば死亡がみられる。豚にも感染し、潜在性に経過するとされますが、台湾での妊娠豚に24.1%に本原虫を検出し、また、122頭の発症豚中死亡44頭、流産32頭で、発熱、流涎、出血斑、神経症状などの症状をみている。


●媾疫(dourine)


T.equiperdumを原因とし、馬にかなり激しい発病を認める。この原虫は接触感染によって伝播し、アフリカ、中近東、シベリアに発生がみられる。


交尾によって感染すると、1週間から数か月で発病します。初期症状が主で、雄では陰茎、陰嚢、包皮、下腹部に浮腫と腫脹がみられ、生殖器粘膜に赤色斑、水疱、潰瘍が生じ、尿道口から粘液、膿を排出します。また鼠経リンパ節の腫脹もみられます。


雌では陰唇が腫脹して液状物を排出します。また膣粘膜は充血し潰瘍もみられます。会陰部、乳房、下腹部に浮腫も生じます。


生殖器で増殖した原虫は血液によって体組織に運ばれ、皮膚には円形の2~10cmの浮腫性斑が現れます。これをターラー斑と呼び、この斑は不規則に消失と出現をみる


後期になると貧血、削痩、悪液質、後軀麻痺、硬直、失調などの症状が現れます。死亡率は、半数に達します。


慢性経過をとるものは1~2年、ときに4~5年の生存をみるものもあります。


●シャーガス病(Chagas diesase)


T.cruziを原因とし、流行地ではヒトの疾病として重要ですが、犬、猫にも病原性がわずかに認められます。自然界ではアルマジロ、オポッサム、ネズミ、その他の哺乳動物を保虫宿主として発育が循環している。


サシガメにより伝播し、中・南アメリカに発生がみられます。小児に発生がおおく、原虫の侵入部位に浮腫、眼に入れば眼瞼浮腫、隣接リンパ節腫脹、頭痛、発熱がみられ、慢性化すると肝・脾腫、貧血、神経症状が現れます。


●睡眠病(sleeping sickness)


T.gambiense、T.rhodesienseを原因とし、ヒトのトリパノソーマ病として重要です。しかし、これらの原虫は犬、豚、牛、めん羊、山羊にも感染しますが、病原性は弱く、いずれの家畜でも潜在性に経過します。


ツェツェバエによって伝播され、アフリカのツェツェバエ分布地区に発生がみられます。


牛に寄生するT.theileriは通常は病原性はないとされますが、動物がストレスや他疾患との関係で悪条件にあるとき、ときに発病し、場合によって死亡することもあります。


トリパノソーマ症の予防



媒介昆虫の撲滅、動物体への昆虫忌避剤の適用を行う。


また、保虫動物対策および疑似症動物の予防的治療を行うなども、予防法として重要ですが、実効をあげるのは困難です。

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キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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