腸管に寄生するトリコモナスには、Trichomitus rotunda、Tetratricho-monas ovis、T.buttreyi、Pentatrichomonas hominis、Tritrichomonas suisなどが知られていますが、臨床上に問題となるのはP.hominisのみです。
P.hominisは、犬、猫、キツネ、サル、ラットにみられますが、模式宿主はヒトです。
哺乳類から検出される鞭毛5本を有するトリコモナスはすべて本種と考えられており、ヒトからのトリコモナスを犬、猫へ、さらに犬、猫からヒトへの感染が可能であり、宿主特異性が少ない。
病原性については不明な点が多く、米国では正常犬の15%以上に検出された報告もあります。しかし、原虫は正常便よりも下痢便に多くみられるのも事実であり、生後、2~4ヶ月齢の幼犬の下痢症例に原虫が検出される。
下痢は一般にかなり激しく、水様性、粘液性ときに血便の排泄もみられます。
この原虫の直接的な起病性は疑わしいにしても、他の原因による腸炎に随伴して増殖をきたし、腸病変や下痢を悪化させることは考えられます。
臨床例の中にはコクシジウムや腸管内蠕虫との混合感染が報告されています。
ヒトでは症状は軽く無害なものと考えられており、本邦ではほとんど報告がない。
その他の腸トリコモナス症の予防
感染は、栄養型の経口摂取によると考えられるので、罹患動物を隔離し、動物舎の糞便の処理・清掃を厳重に行います。