蹄叉腐爛(thrush) ~ 原因・症状・治療法

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蹄叉腐爛とは蹄叉角質が腐敗し崩壊した疾病です。

蹄叉腐爛の原因



延蹄・挙踵蹄・狭窄蹄・山羊蹄・蹄叉の過削・護蹄の怠慢・過厚の蹄鉄および鉄臍蹄鉄の長期装着・硬地上の使役などは、いずれも蹄機を阻害し蹄叉の発育を妨げるため、本症発生の原因になりやすい。


特に不潔で湿潤した厩舎内の飼育、および運動不足は重要な誘因となります。


肉叉の循環障害による角質の分離を原因としたり、また患部に特異な好酸菌の存在を指摘するものもありますが、いまだ発生原因についての定説は見られません。


蹄叉に開口する跖枕腺glands of digital cushionの存在は、本症の発生と関連があるかも知れません。なお、本症は平素の飼育管理および護蹄に注意すれば十分に予防できるものです。

蹄叉腐爛の症状



一般に蹄叉中心溝における角質の腐敗崩壊にはじまり、逐次周囲に蔓延して蹄叉の萎縮を伴います。


患部には大小さまざまの空隙が形成され、内部に悪臭を発する不潔黒色あるいは灰白乾酪様の角質腐敗崩壊物(蹄膿)を充満しています。


この腐敗は、さらに周囲の蹄叉尖・蹄叉脚におよび、内攻するときは肉叉を冒し、蹄叉角質の大部分が失われることがあります。


本症は、時に蹄叉旁溝にはじまり、主として知覚部を冒し、蹄叉角質表面には何ら変状を現さないことがあります。


蹄叉が崩壊して肉叉が露出したものは、その表面に顆粒状の肉芽を形成し、容易に出血する。この病変は、悪化すると蹄癌をひきおこすことがあり、また腐爛が肉叉から肉底さらに肉壁におよぶときは、あたかも蹄葉炎のような症状をあらわし、高度の跛行を伴うことがあります。


本症は、一般に蹄機を妨げ、血行を害するため、狭窄蹄・裂蹄・蹄血斑を誘発し、また病機が肉冠におよぶものでは、正常な蹄輪と交叉する異常蹄輪が現れます。

蹄叉腐爛の治療法



腐爛が周囲の組織に蔓延し、陳旧で変形蹄を誘発したものは、予後は疑わしい。


早期に発見されたものあるいは軽症では、原因の除去、局所療法ならびに装蹄療法によって治癒します。


蹄の乾燥または過度の湿潤を避け、平素良く蹄の手入れをして運動を課し、清潔な厩舎内で管理する必要があります。


局所に対しては、まず腐敗分解した角質を丁寧に削除して、1%石炭酸水で洗浄消毒します。特に蹄膿が貯溜しているものでは、硫酸銅液を注入したのち、ヨードチンキを塗布します。


2%ホルマリン・アルコール綿花の挿入、あるいは木タール・ピチロール・ピクリン酸の応用も効果的な場合があります。


装蹄療法は特に重要です。すなわち定期的な改装を励行して蹄の変形を矯正するとともに、蹄叉の発育を良好にするため蹄負面を削切して、なるべく薄い連尾蹄鉄、あるいは半月状蹄鉄または四分三蹄鉄を装着します。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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