TEPPの性状
この化合物は既にNYLEM氏(1930年)によつて合成されたもので、殺虫力は、その後SCHRADER氏等により発表されました。

TEPP Tetraethyl pyrophosphate
本剤の化学構造式は上記の通りで、パラチオンのSをOで置き換え
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TEPP Tetraethyl pyrophosphate
の代わりに
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TEPP Tetraethyl pyrophosphate
を入れているところが特異です。
沸点144~144.5℃、水溶性で容易に加水分解します。
この性質は薬の調製時や中毒の治療に当って注目すべき特点です。
市販品は水溶性液体のみで、淡黄褐色のやや粘稠な液体で水より少し重く、比重1.2で、水に易溶で芳香があります。
有効成分Tetraethyl pyrophosphateを40%含み、2000~3000倍に稀釈して用います。本剤は、不安定で加水分解され易く、調製後2~3時間以内に撒布すべきで、殊に気温の高いときは効果のなくなるのが速い。
殺虫力と毒性
本剤は主に接触剤として作用するので効果の現れるのが早い。
消化毒としての効力もありますが、分解が早く、その効力は1日くらいです。したがって残効性に乏しい。
TEPPはニコチンに代わる有効な殺虫剤で、アブラムシ、ダニを初めウンカ、ツマグロヨコバイなどに効くので果樹によい成績をあげます。
また毒性が速く消失するので、イチゴ、桑、茶などには利点がおおい。
人畜に対する毒性は現在本邦で使用されている燐製剤中、最も大きく、マウス経口LD₅₀ 1.9mg/kgであり、特に接触作用が甚だしいから経皮的の中毒を起こしやすく、ネズミでは2.5mg/kgで1.5時間以内に死ぬ。
濃厚溶液に対しては充分警戒しなければなりません。
しかし、稀薄溶液で時間を経た場合は毒力が大いに減じます。市販品はTEPPを35~40%含み、1000~3000倍液を用います。