ブタの起原(豚)Swine

中ヨークシャー Middle Yorkshire
中ヨークシャー Middle Yorkshire



ブタは現在のイノシシ(野猪)が家畜化されたものです。イノシシには大別してヨーロッパ産(Sus scrofa L.)とアジア産(Sus vittatus MÜLLER α SCHLEGEL)との2種があり、このおのおのが各地で家畜化されて、その地方独特の形態をもつ在来豚となったとされています。


なお、この両種が接して交雑されたと思われるところには、中間形態のものが存在している。南ヨーロッパにみられる地中海沿岸地方産のイノシシ(Sus mediterraneus)はそれです。


しかし、Sus mediterraneus と Sus scrofaとの区別は、解剖学的にも、形態学的にも判然としていません。


大ざっぱにいえば、アジアのブタはSus vittatusから、ヨーロッパのそれはSus scrofaから生じたといえるようです。


イノシシは古くから現れており、中央ヨーロッパでは、旧石器時代に原始人の狩猟の対象となっていました。この家畜化の歴史もかなり古い。


新石器時代のスイスの湖棲民族の遺跡(B.C. 5,000)から発掘された泥炭豚(Torf schwein)は、家畜化の程度の低い初期のブタを示すものとされています。


またブタはB.C.4,000年ごろ、すでにメソポタミアの農民によって飼われています。また、B.C.3,000年ごろ、エジプトにおいて、B.C.2,000年前後にはアジアの東部と南部において、飼われていたらしい。


この家畜化の動機については、つぎのような推測がなされています。


すなわち、ヒトに馴れやすいイノシシの子が偶然、人間に飼われたことから始まり、そのうち、その多産性とか雑食性などの特性が注目されて、ついに経済的な意味を持つ家畜になったものであろうというのです。


またブタを不潔なものであるかのように、全然省みない民族が今でもいるが、それについては次のような考察がなされています。


ブタの食性は雑食で、人間と同じです。ときには競合もしたでしょう。ことに食糧貯蔵のできない遊牧民族では、飼い得なかったに相異ない。


その結果、習慣的にブタを嫌うようになり、それがついに宗教的な意味にまで発展して、ブタを飼わず、食べもしないものとなったというのです。


現在、回教徒はブタを食べない。イノシシは各地にいるから、その家畜化もヨーロッパ、アジアの各地で行われたはずですが、歴史的にみて、養豚のさかんになったところは、肉食を好む国民のところに限られ、その理由も、正にここにあるのでしょう。

日本における歴史



有史以来本邦にはイノシシがいたらしく、これを神聖視して犠牲に供した記事があります。すなわち、神代からイノシシを捕まえて飼育したということが、古事記にあります。


また聖武紀にイノシシ40頭を野に放つとあるから、奈良時代にもかなり飼育されていたと思われます。その頃には、飼われたものの外型も能力もイノシシと大差なかったのでしょう。


しかし、肉が主目的であったし、これらは一応飼育していたものであるからブタといえるかも知れません。しかし仏教の伝来により肉食が禁じられてからは琉球(沖縄)以外は、ブタは飼われていませんでした。


その間、約1,000年といわれています。しかし慶長14年(1609)にオランダとの通商が開始されて、長崎の出島にオランダ人が、ブタを飼い始め、再び本邦の養豚が始まったということです。


すなわち、そのブタを日本人が譲り受けて飼い、外人に生肉を販売し、また加工も行うようになり、次第に各地に拡がりました。ことに外人が多かった横浜、函館付近に盛んになりました。


また地理的に近い関係で、琉球から鹿児島にも入り、明治の初期には、かなり全国的に拡がりました。その後、ヨークシャー、バークシャー、ポーランド・チャイナなど外国種の輸入も盛んとなり、豚肉の消費も漸増して、養豚は漸次盛況ををみるに至りました。


本邦において豚肉に対する嗜好が一般に普及したのは、第一次大戦以後で、それまでは、不潔、脂臭、寄生虫などの誤解があり、これを食う人はむしろ少なかった。


また、第一大戦後、豚肉加工の技術がドイツ人によって伝えられ、加工品の生産消費も、そのころから大いに延びました。


ブタは産子数が多く、増産が容易なことから、ブームが来たり、衰えたり、いわゆるPig cycleを繰り返してきましたが、近年は価格安定政策その他の行政処置が講ぜられつつあり、養豚の健全な発達が期待されています。

品種の分類法



肉の用途によってその体型を大きくラード型(Lard type)とベーコン型(Bacon type)とに分けられる。これをさらに詳細にラード型(Lard type)、ベーコン型(Bacon type)、ミート型(Meat typeまたはPork type)に分けることもあります。


ラード型は、早熟性と肥満性を持ち、一般に小柄で、肥満しやすく、良肉を多産するが、脂肪の蓄積もまた多い型です。小ヨークシャーやバークシャーはこの型です。


ベーコン型は脂肪沈着が比較的少なく、良質のベーコンを生産するに適する型の豚で、大ヨークシャーはこれに属します。


ミート型は、前2者の中間の体型、能力をもつものですが、脂肪よりも赤肉を望まれる昨今で、寧ろ脂肪の極力少ないものを狙い、この型が現在における改良の目標になっています。


したがって、これを近代型(Mode-rn type)あるいは赤肉型(Lean type)といっています。


また未改良のものを土産種といい、改良されたものを改良種という。また作出された地域を基準にして、ヨーロッパ種、アメリカ種、東洋種に分けることもあります。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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