ショートホーン(Shorthorn)

ショートホーン
ショートホーン



現在、ショートホーンには乳用型と肉用型との2つの品種があり、前者を乳用ショートホーン(Dairy Shorthorn)、後者を、肉用ショートホーン(Beef-type Shorthorn)といっています。


登録も別個の協会で行われています。しかし、それらのもとは同じで、もともと肉用として力を入れられていたものが、改良の過程において乳用を兼ねるようになり、それらがまた一部分かれて、乳用ショートホーンが作出されました。


ショートホーンの原産地はイギリスのイングランド東北部で、テイース河を中心として、その沿岸の沃野、ヨークシャーおよびダーラムにまたがる。


アメリカで以前にショートホーンのことをダーラム(Durham)といったのは、このためです。また、ショートホーンという名は、当時原産地地方にいたロングホーンの牛を、初期の育種家が選抜によって、その角を短くしたところからきています。


ショートホーンの起源は、イングランドの昔の侵入者であるローマ人、ノルウェー人などが海を渡って牛を持参し、土産牛に交配したに始まります。


その後、オランダ牛が持ち込まれて交雑され、ここにショートホーンの祖畜ができました。しかし、本種の改良が始められた18世紀以前の祖畜は、粗野な斉一度を欠くひどい牛でした。


それが現在のすぐれたショートホーンになるまでには多くの偉大な育種家の努力がありました。


本種の改良を組織的に行った最初の人は、コーリング兄弟(COLLING Brothers)です。


当時、ロバート・ベークウエル(ROBERT BAKEWELL 1725~1790)という有名な家畜育種家がいて、当時一般に嫌われていた近親繁殖を強行して成功しました。


彼の方法は、改良の目標を立て、それにもっとも近い形質をもつものを、まず選抜し、それを基礎として近親繁殖を行うことでした。


そして新しい血液をもってくるのは、目標に近いもので、余程優れたものが見つからない限り行わなかった。この方法を当時、ベークウエル法(Bakewell system)と言っていました。


そしてこの方法をショートホーンに応用したのが、コーリング兄弟です。


兄のチャーリス・コーリング(CHARES COLLING,1750~1828)は直接ベークウエルのところに出掛けて、教えをこうています。この兄弟は極端な近親繁殖は行わない、早熟早肥の肉牛としてのショートホーンの基礎牛群を作出しました。


その後、ブース(BOOTH)親子がコーリング牛群の系統牛についてさらに改良を加え、肉用牛としての体型の改良に貢献しました。


また、他方、トーマス・ベーツ(THOMAS BATES,1775~1849)は同じくコーリング牛群の系統牛について乳用資質を兼備したものを作出し、ここに乳用ショートホーンの基礎ができました。


すなわち、乳用と肉用とは1800年ごろから、2大分流として分かれたようです。


なお、肉用ショートホーンには、もう1つの系統があります。それはイギリスのスコットランド北部に端を発するもので、同地方のアバディーンシャー州を原産地とします。


これを、スコッチ・ショートホーン(Scotch shorthorn)といっています。


もっとも、もとをただせば、これもイングランドからスコットランドの南部に、それがさらに北部に移ったもので、同一祖のものです。


スコッチ・ショートホーンの育種家として有名な人は、エーモス・クルックシャンク(AMOS CRUICKSHANK,1808~1895)であり、彼は気候的にも、土質的にも恵まれない北スコットランドにむく、中軀のしっかりした頑丈な肉牛の育種に成功しました。

ショートホーンの詳細



乳用ショートホーンの毛色は純白または暗赤色の一枚毛、赤白斑のもの、白地に褐粕毛(ローン roan という)など種々です。


肉用ショートホーンも同様毛色はさまざまです。なかには、毛の著しく縮んでいるものもあります。体格はいずれも大型、乳用ショートホーンは体高、雌約130cm、雄約140cm、成体重、雌600~700kg、雄1,000~1,200kgです。


肉用ショートホーンは体高、雌約128cm、雄約137cm、成体重、雌630kg~675kg、雄、810kg~990kg、標準は900kgです。


肉用ショートホーンは近年、その早熟早肥性をますために、種雄牛は極端に肢の短いもので、体積のあるものを使うようになりました。そのため体高は著しく小となりました。


乳用ショートホーンも、顔が短く、幅広く、頸も太く、前胸が前方に突出し、胸深く、肋骨の開帳大で、肉付き良く、四肢短く、大体肉用型です。


しかし、乳房が大きく、よく発達しています。


もっとも乳用ショートホーンのなかには、側望のかなりクサビ型のものもあります。しかし、本種の標準型からいえば、乳、肉の両者の中間をいく乳肉兼用型です。


肉用ショートホーンは完全な肉用型で、ことに後軀が厚みと幅とにとみ、腿がよく充実しています。また、乳房は割合に大きい。

能力



乳用ショートホーンの目標は成牛で年間乳量3,600~4,500kg、乳脂率4.0%ですが、現在ふつうのものは、乳量2,700kgぐらい、乳脂量110kgぐらいです。


牛乳は白く、脂肪球は小さく、市乳用およびチーズ、練乳、粉乳原料用です。体格からいっても、この肥育性の大きいことは容易に推察されますが、事実若令でもよく肥えるし、また乳があがる(涸乳する)と急速に肥ってくる。


屠殺時の枝肉の歩留も高く、65%です。


肉質も良く、筋肉中への脂肪交雑もよい。また肉繊維も細く、やわらかい肉を生産します。たた、肉色は淡い。


性質は温順で、性成熟はそう早い方ではなく、19~21か月が初種付けの月令、28~30か月が初産分娩月令です。妊娠期間は284日(雌胎児のとき)と285日(雄胎児のとき)です。


子牛の生時体重は34~36kgです。


肉用ショートホーンは肥育性が実に大で、肥りやすい。ただし、体表部に脂肪瘤ができやすい欠点があります。乳量は肉用牛としては、とくに多い方です。


また、性質はきわめて温順です。

分布



乳用ショートホーンは世界各国に分布し、特にイギリス、アメリカ、オーストラリアに多い。現在、イギリスでもアメリカでもショートホーンは乳肉兼用種としても、もてはやされています。


すなわち、雄は去勢して肉牛とし、雌は乳用牛として使うという型の飼育がなされています。ただしスコッチ・ショートホーンは専門の肉牛として通用しています。


肉用ショートホーンも広く世界に分布していますが、特にアメリカ、アルゼンチン、ブラジル、オーストラリアに多い。


本邦には明治5年(1872)にアメリカから輸入され、その後しばしば輸入されました。


ときにより乳用が入ったり肉用が入ったりしましたが、結局肉用として利用されたものが多い。また、和牛の改良に使われたことがあり、また日本短角種の作出に貢献しました。


最近、北海道にアメリカから導入されました。

キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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