ヘルニア(Hernia) ~ 陰嚢ヘルニア


陰嚢ヘルニア(scrotal hernia, orchiocele)



馬、豚に発生し、犬にもまれにおこる。雄畜に発生する。


鼠径ヘルニアの一変型とも考えられる。


原因:鼠径ヘルニアの原因と同様に考えられますが、先天的に鼠径輪、鼠径管の異常拡大によることが多い。したがって、幼畜に多発する。


また内分泌機能との関連があるとも考えられている。


去勢後に発生することがありますが、その場合、ほとんど去勢創からヘルニア内容が脱出するため、むしろ腸脱です。


症状:ヘルニア輪は鼠径輪、鼠径管であり、ヘルニア嚢は陰嚢です。ヘルニア内容は小腸、大網、まれに膀胱(豚)であって、腹腔から鼠径管を通り、鞘状(膜)腔におよび、その底にまで達している。


陰嚢は片側または両側性に腫大する。馬、豚では人頭大、犬では拳大に達することがあります。普通、還納性で腹圧の増減により大きさが変化する。


腫瘤は柔かく弾力性があり、無痛で熱感を欠き、全身症状もない。鼠径輪を触診すると2~3指、馬では時に拳が通るほどに拡大していることがあります。


ヘルニア内容が鞘膜と癒着していることがありますが、嵌頓をおこすことはまれです。後天性のものでは嵌頓を生じることがあり、腫脹、疝痛症状などの症状を現す。


診断:鼠径ヘルニアにくらべ診断は容易です。陰嚢水腫、血腫、去勢後の精系硬変(精系断端腫)との類症鑑別が必要です。

治療法



先天性の陰嚢ヘルニアは幼時に自然に治癒する場合もありますが、経過に注意し、必要に応じて手術を行う。


手術:還納可能なものはヘルニア去勢を実施する。すなわち、ヘルニア内容を還納し、精索を総鞘膜とともに浅鼠径輪に接して捻転し、結紮して切除し、睾丸剔出も同時に行う。


ヘルニア去勢を行ってもまれにヘルニアが再発することがあります。この場合は再手術により浅鼠径輪を十字に数回結節縫合して閉鎖します。


嵌頓ヘルニアの場合は、慎重な注意のもとに陰嚢および総鞘膜を縦に浅鼠径輪まで切開し、腸管などヘルニア内容を還納し、総鞘膜および精索を結紮切除し、浅鼠径輪を縫合して閉鎖する。


癒着している腸管を剥離する場合には、鼠径管を開大し、時には深鼠径輪まで拡げることもあります。ただし嵌頓が長期にわたった場合には、腸が腫大し破裂しやすいため、還納不能で予後不良となることもあります。


腸の損傷が著しい場合には、損傷部を切除して腸管を吻合する必要が生じる。


一般に小腸の嵌頓の際には、糞便がそこに停滞して重度の毒血症toxaemiaを発する危険が大きいので、症状を発見したらなるべく早く(10時間以内に)手術を行う必要があります。


嵌頓ヘルニアの場合にも去勢をあわせ実施する。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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