腟破裂・膣炎


腟破裂(rupture of the vagina)



膣の破裂は主として分娩時に自然におこったり、また拙劣な助産や交配などによっても発することがあります。本症はどの動物にも見られます。

症状:



初期であれば出血が見られ、大動物では視診により小動物では多くは触診によって外傷を検知することができます。また外傷部を通じて骨盤内の脂肪組織が膣腔内や時には、外陰部にヘルニア状に突出して腫瘍とまちがえられることもあります。


本症で多量の出血をおこせばショックの症状を呈し、感染がおこれば、その程度や状態によって、フレグモーネ、膿瘍、壊死、腹膜炎、敗血症などに移行し、それぞれ特有の症状を呈する。


また破裂がはなはだ小さくて感染もおこさない場合には、ほとんど明らかな症状もなしに経過します。

治療法:



破裂が完全でなく、破裂が腹腔内に通じていない場合は、できるだけ完全に清浄になるまで洗浄し、傷が腹腔内に通じている場合には前低の体位や麻酔によって腹圧を減じて縫合した上で十分洗浄する。


小動物ではこの縫合を腟式に行うことは不可能なので経会陰式に行う。一般に陳旧の破裂にあっては癒着などのため完全な治療は困難です。


全身的には感染やショックの状態に対する治療を加えることはいうまでもありません。


腟破裂で直腸腟瘻を生じたものは不妊の原因となりやすい。

腟炎(vaginitis)



一般に腟腔は病原体に対して比較的防御力が強いが、時に外傷に続発する非特異性感染や、特別な病原体にもとづく特異性膣炎などを発することがあります。


後者には牛の伝染性膿疱性膣炎infectious pustular vaginitis IPV,牛の伝染性頸管腟炎infectious bovine cervicovaginitisなどがあり、前者では壊疽性または壊死性腟炎gangrenous or necrotic vaginitisなどがよく見られます。

症状:



壊疽性膣炎は難産や動物間の咬傷などに継発し、牛をはじめ豚、犬、猫などに見られ一般の壊疽性炎に共通の症状を呈する。また軽度の単純な感染ではカタール性腟炎などをおこし、慢性に発赤や分泌物の増加などをあらわす。


もし炎症がバルトリン腺や牛のゲルトネル腺におよべば、これらの腺の炎症をおこし、多くは分泌物を貯留して嚢腫状を呈します。


壊疽性炎では炎症が比較的早く腹腔へ波及し、また分解産物の吸収による全身症状がはげしい。特異性感染ではもちろんそれぞれ比較的特徴ある所見を呈し、時には顕微鏡的に特徴のある封入体を示すこともあります。

治療法:



非特異性感染による膣炎のうち壊疽性膣炎は治療が比較的困難であり、予後も不良です。


病機が進行して腟の回復の見込みのないものは、多くは子宮腟全摘出手術または時として腟全摘出手術が行われますが、動物の経済価値はほとんど失われる。


軽度の腟炎では希釈ルゴール液または色素剤、過マンガン酸カリ液などで洗浄が行われ、原因が尿腟にある時は、矯正手術を行うことがあります。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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