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子宮破裂・子宮蓄膿症


子宮破裂(rupture of the uterus)



妊娠時の転倒、あるいは滑走、蹴傷など外部からの打撃、胎児の肢の活発な運動、分娩時には長時間の難産、すなわち子宮捻転時の胎児の強引な牽引ないし不適当な処置、胎児の四肢強直などの際に起ることが多い。


一般に疝痛症状、腹膜炎は牝馬の際によくみられますが、牝牛、雌羊では子宮破裂の症状が軽く、食欲減退、反芻停止、呼吸・脈拍の異常、四肢冷感などがみられ、時に大量の出血を伴うとショック症状を呈することが有ります。


しかし、感染があると重度の敗血症の症状が急速に進展し1~2日で死亡することがあります。


各動物とも一般に子宮裂創が小さく、自然癒合し、腹膜炎をおこさないような場合以外は、予後は一般に不良であると考えられます。

治療法:



難産後などで感染のない子宮小損傷の場合は、オキシトシンの反復注射、ペニシリン、ストレプトマイシンなどの抗生物質投与を併用するだけで十分です。


大破裂の時はもちろん縫合を要しますが、牛では開腹後子宮縫合を行ったり、産道から損傷部位に到達する方法を考慮したりしますが、術式はかなり困難です。


牛、羊、豚では重度の場合はいずれも予後は不良と考えるべきです。


犬などの場合は、開腹あるいは子宮摘出術を早期に行い、あと抗生物質療法、腹腔内洗浄を行うと回復することがあります。

子宮蓄膿症(pyometra)



子宮蓄膿症は主として犬、牛、猫などにおこりますが、他の家畜には比較的まれです。子宮蓄膿症はいろいろな型の子宮の感染に継発しますが、通常子宮内膜炎とは別に取り扱われ、子宮に化膿性内膜炎がおこって頸管からの膿の排泄がほとんど行われないために、子宮内に膿の貯留したものをいう。

原因:



牛の子宮蓄膿症の最大の原因は胎児の早期死の後、胎児浸漬や融解をおこし、そのまま子宮から排泄されずに貯留するためです。もちろんトリコモナス症、結核などの特異な菌による感染も一般の化膿菌による非特異性感染もあります。


馬ではKlebsiellaなどの感染による慢性子宮内膜炎で、頸管炎を併発するときは頸管の肥厚から二次的の頸管閉鎖をおこし、子宮蓄膿症をおこすことがあります。


また生殖器の発育異常も本病の原因となるらしく、たとえば子宮の部分的形成不全segmental aplasiaや処女膜閉鎖などでときとして本症をおこす。


犬の場合は原因が明瞭でないが、おそらく発情期における感染や妊娠中の胎児の死亡などのほか、偽妊娠もその要因となるでしょう。


牛の子宮内膜炎、犬の偽妊娠などで、黄体ができると分泌されるプロジェステロンは子宮の感染抵抗を低下させ、頸管からの排液を抑制し、子宮の運動性を低下させるなど子宮蓄膿症を発症しやすい条件をつくり、そのため病機が進行します。

症状:



牛に見られる子宮蓄膿症では、とくべつな症状を示さない。


通常無発情であり、直検によって黄体遺残を触れることが多い。また子宮の膨大や内容の存在をみとめますが、運動、収縮性がなく、中子宮動脹の発育は良くない。


また子宮腟部はうっ血していることが多い。全身症状を示すことは少ない。


犬に見られる子宮蓄膿症は症状がより特徴的です。腹囲の増大は程度の差はありますが、毎常おこり、本病の発症が交配後であるため、妊娠と間違われやすい。


つぎに多飲polydipsiaと多尿polyuriaはほとんど全例に見られる。


この原因について下垂体性の欠陥だともいわれますが、まだ確定的ではありません。やや慢性に経過したものでは中等度の貧血を伴います。


白血球数は毎常増加の傾向を示し、はなはだしいものでは100.000/mm³をこえる。


ときには菌血症、敗血症をおこし、体温上昇、食欲低下ときに廃絶、元気沈衰などの全身症状を呈します。

診断:



牛、馬では直検によって比較的容易に診断することができます。この際妊娠、胎児のミイラ変性、腫瘍などとの類症鑑別を行う必要があります。


犬の子宮蓄膿症の診断も比較的容易で臨床所見、触診、および血液所見でほぼ確実な診断を下すことができます。


またX線撮影を行えば膨大した子宮を確認することが、多くの場合可能です。


診断にあたっては腹水、糸状体腎炎、間質性腎炎、膀胱の疾患、腫瘍、妊娠などとの鑑別が必要です。


子宮蓄膿症を疑う場合は、これらとの鑑別にあたって穿刺を行うことは、通常禁忌です。


したがって、鑑別上の要点は聴、触診、尿の沈渣、尿の濃縮能、導尿、膀胱造影、血液検査所見などです。ときとしてエストロジェンの投与によって子宮より膿の漏出を見ることにより、診断を確定することもありますが、つねに有効ではない。

治療法:



牛では永久黄体の除去、エストロジェンの投与によって子宮外口の弛緩をはかり、徹底的に洗浄した後、抗生物質などを注入する。この際蛋白分解酵素なども有効のようです。


犬では子宮洗浄はほとんど不可能です。またエストロジェンによる排膿も完全でない。したがって、開腹による卵巣子宮全摘出手術が推奨されます。


とくに子宮摘出を避けなければならないような症例では、開腹により左右子宮角より外陰部に通ずる残置カテーテルを挿入し、内容を排除したのち良く洗浄し、開腹創閉鎖後も経腟的にしばしば洗浄と化学療法をくり返し、化膿性機転が停止してからカテーテルを除去する。


結果はときに成功に終わるが、成功すれば再妊娠も可能です。


近年ではこのような場合の保存療法として、プロスタグランジン(PGF₂α)の子宮収縮作用を利用する方法も用いられていますが、再発を完全に阻止することは困難なようです。


犬では開腹手術にあたり、全身的症状に対する各種の処置たとえば輸液、輸血、ショック防止などを行うとともに手術後全身的に化学療法その他必要な処置を行うことが効果的です。


とくに全身状態の悪化した本症手術後の合併症としては術後腎不全の発生する可能性が大きいので、術中・術後の尿量のモニターを含めた慎重な術中・術後管理が手術療法の成否の鍵を握ることが少なくありません。