屈腱断裂
本症は馬、特に競走馬に発生の機会が多く、他の動物ではまれです。
屈腱断裂は皮下断裂と開放性断裂とに分けられます。
屈腱断裂の原因
皮下断裂は主に強い外力が腱に加わり、過度に伸張されておこるもので、疾走中、ことに疲労・装蹄失宜 その他による運歩の異常によって球節が過度に伸展した時、また時には跳躍、蹉跌、重輓曳などがその直接的原因となります。
保定の時に暴れておこすこともあります。
なお内因としては、腱の退行変性により、自発性断裂を発することがあり、また往々腺疫や胸疫の経過中に、または神経切除後に発し、あるいは栄養障害による骨疾患の際に、腱の付着部が脆弱になって発することがあります。
開放性腱断裂は追突、蹴られる、鋭利な器物や農耕用プラウによる切創などによって、馬、牛ともに発し、1ないし2本の腱が一部もしくは完全に切断されることがある。
症状
屈腱断裂は症状としては、全断裂と不全断裂とに分けられます。
皮下の全断裂は深屈腱にもっとも多く、特に蹄骨付着部(屈筋面)付近に発します。
開放性の深屈腱断裂は、しばしば繋凹部におこります。突然重度の支跛を呈し、蹄尖が上反し、運歩にあたって蹄は振子運動をします。
駐立時には蹄踵で接地し、蹄尖はやや上方に向う。
断裂直後には触診によって、断裂部を触知することができる。
繋靱帯の全断裂は単独に発することはまれですが、往々分岐点直上におこる。突然重度の跛行を呈し、患肢を挙上します。
負重に際しては、球節の沈下が著明ですが、蹄尖は上向しない。
患肢をあげて局所を触診すれば断裂部が触知でき、また球節を伸長すると異常に背屈する。
浅屈腱単独の全断裂では、重度の支跛、球節の沈下、蹄尖の挙上などが認められますが、深屈腱の断裂と合併するときは、上記の深屈腱断裂よりも、さらに重度の症状を呈し、蹄尖の上反が著明で、前方から蹄低をみることができ、繋は水平となり、球節後面が接地する。
不全断裂は腱炎との区別が困難ですが、腱炎より跛行が著明で患肢にほとんど負重しない。
治療法
全断裂は、大動物では予後不良ですが、不全断裂では、患部の固定が十分であれば、治癒の見込みがある。すなわち、不全断裂では重症の屈腱炎と同様に処置し、圧迫包帯、副子包帯、、ギプス包帯などで患部を固定します。
小動物に発生した全断裂では、腱縫合を行い、患部を固定する。
大動物でも腱縫合を実施できますが、固定が困難なので、多くの場合不成功に終わる。
開放性のものでは、まず創傷療法を行う。