哺乳期子牛 ~ 第二胃溝反射



新生子牛の前胃(1~3胃)は未発達です。一般に2ヶ月で成熟形態に発達し、3ヶ月で体型相対比が完成する。


この速度は給餌飼料の種類によって著しく異なってくる。

第二胃溝反射

哺乳期子牛では飲乳によって第二胃溝反射が成立し、乳は食道から直接第三胃に入る。従って生後6週齢までの子牛は単胃動物と考えて良い。

この飼養形態では飼料効率が極めて高い。

それ故、液体飼料を用いてできるだけ長い期間をこの系の飼養を続ける技術も発達している。

薬物のバイパス投与

哺乳期子牛に対する薬物の経口投与では一般に代用乳に混合して投与する。

8週齢までのこの投与法では単胃動物に対する経口投与と同じことになる。第二胃溝反射は20ヵ月ぐらいまで残る。従ってこの期間に抗下痢薬や駆虫薬を投与する時にはこの反射を利用することがある。

即ちNa₂CO₃やNa₂SO₄の10%液の小量を先ず経口投与すると2~3秒で第二胃溝反射が成立して約60秒続くので、この間に薬物水剤を投与する。


鼓張症(bloat, rumen tympany)



第一胃が大量のガスで膨満する疾病。


第一胃のガス発生が多くても吐出できれば発生しない。一般には第一胃の泡立ちが激しくて気体の吐出が不可能な場合に起る。


発泡の原因は①粒度の細かい濃厚飼料の多給や、②アルファルファやクローバなどのマメ科植物の多給です。

ポロキサレン(poloxalene)



オキシエチレンとオキシプロピレンとの重合体で平均分子量が約3千の非イオン性表面活性物質です。消泡作用が強いので鼓張症の予防治療に用いられる。


予防には飼料添加で用い、治療には大量の水に溶解して経口投与するか、高濃度溶液を第一胃内に注射する。

第一胃欝帯(rumen atony)



こも症状は第一胃・第二胃運動の持続的な減退または消失です。


この症状に対して第一胃運動促進薬(ruminatonics)が用いられることがある。


代表的薬物はネオスチグミンとベタネコールであり、皮下注射で用いる。いずれも速効性であるが有効時間は短い。


第一胃欝帯は独立した疾病ではなく、過食・創傷性胃炎・低マグネシウム血症・低カルシウム血症・ケトーシス・第四胃潰瘍・第四胃変位などに併発する症状です。


従って原因疾病の治療が先ず必要であり、第一胃運動促進薬による対症療法には疑問が持たれている。

創傷性胃炎(hardware disease)



この胃炎は釘などの金物が第二胃の胃壁を損傷し、さらに腹膜炎や心嚢炎を併発する疾病です。過去には多発疾病であったが、小型磁石を投与して予防する方法が普及したので発生頻度は低下している。


この種の治療用具には薬事法が適用される。

尿素中毒(urea poisoning, アンモニア中毒)



反芻動物の尿素中毒はアンモニア中毒であるから良質蛋白を過量に与えた場合の中毒と同一です。尿素は蛋白の代替飼料成分として用いられる。


第一胃内ではウレアーゼによってNH₃になるが、NH₃のpKaは8.9であり第一胃内のpHは6.5程度であるから殆ど全量がNH₄⁺イオンとして存在し、吸収されない。


NH₄⁺イオンは微生物蛋白に変換されて第四胃以下で消化される。


尿素の給餌が多過ぎるとアンモニアの生成量が多くなり、第一胃内のpHが上昇する。pHが上昇すると①ウレアーゼが活性化してアンモニアの生成がさらに増え、②NH₄⁺とNH₃の比率が分子型側に傾き、NH₃が増加する。


③NH₃は吸収性が良いので急速に吸収される。


④このNH₃を肝では処理しきれないので血中のNH₃濃度が上昇する。また、⑤NH₃は肝のTCAサイクルを抑制するので嫌気性解糖が促進されて多量の乳酸が生成されて血中に出るためにアシドーシスになる。


臨床症状はアンモニアとアシドーシスによる症状であり、腹痛と中枢神経興奮による振戦や痙攣が特色です。

ルーメンアシドーシス(rumen acidosis)



第一胃内で生産される揮発性低級脂肪酸(VFA)は酢酸、酪酸、プロピオン酸であり、いずれもpKaが約4.8です。第一胃内のpHを6.5とすると数%が分子型で存在する。


従ってこれらの酸はゆっくり吸収される。プロピオン酸は糖原として利用される。


第一胃内では乳酸も生成されるが、乳酸のpKaは3.8であるから第一胃の正常なpHでは殆ど全量がイオン型で存在して吸収されない。乳酸は微生物によってプロピオン酸に変換される。


第一胃内に可溶性の炭水化物が多く入るとVFA生産が増加してpHが6以下になる。この状態では第一・第二胃運動が低下し、食欲不振になる。


さらにpHが下がると乳酸菌が増殖して乳酸の生産が高くなるのでpHが5以下になる。この状態では①乳酸の分子型率が高くなって吸収される。②第一胃内の浸透圧が600~800 mOsmにまで高まるために大量の水が細胞外液から第一胃内へと流入する。


③小腸まで強酸性になって腸炎を起こすので水様下痢を発症させる。


第一胃内で生成される乳酸はDL体であり、吸収性はD体もL体も同一です。しかし、肝はD体を殆ど処理できないのでアシドーシスの原因になる。


このような病態のため、第一胃アシドーシスでは脱水症とアシドーシスの症状が現れる。良質の炭水化物を多給すると12~24時間以内に昏睡状態になって死亡する。

治療

アルカリ化薬と乳酸菌に有効な抗生物質(エリスロマイシンなど)を経口投与し、点滴輸液する。


第四胃変位・捻転(abomasal displacement, torsion)



第四胃変位にはアルカローシスが併発し易い。


特に捻転になった場合は必発です。正常状態では第四胃で分泌される胃液は小腸で吸収される。しかし第四胃変位や捻転によって胃内容が小腸へ流出しなくなると、胃粘膜はH⁺やCl⁻を吸収できないので胃内に塩酸が貯留し、この分だけ体液中のNaHCO₃が増加し、アルカローシスになる。

治療

第四胃変位・捻転は外科手術の適応症であり、手術によって第四胃内容が小腸へ流入し始めると数時間以内に酸塩基平衡が正常に戻る。

アルカローシス自体は危険な病態ですが、この疾病では元来バランスをとるべき酸が体内に存在するのでアルカローシスに対する治療は不要です。

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