ぺっとくすり

腟脱・陰門裂傷


腟脱(prolapse of the vagina)



腟脱は、牛、羊に多発し、時に犬、豚などにも見られます。


腟脱は妊娠中期以後あるいは分娩直後におこることが多い。

症状:



牛におこる腟脱では、軽度のものは横臥時にのみ突出し、起立時には自然に整復する(腟翻転vaginal inversion)が、やや進んだものでは常時露出し、さらに進んだものでは陰門部で絞扼されて浮腫を呈する。


腟壁の突出した下には、通常腹腔脂肪が存しますが、時に膀胱が脱出していることがあります。この際は腟膀胱脱vaginal cystoceleといわれ、通常膀胱内の尿を触知することができる。


脱出した腟壁は新鮮なものはやや充血した健康色ですが、陳旧のものは結膜の欠損、出血、感染、高度の充血、うっ血などを示し、これらが刺激となって動物はさらに努責し、脱出が進行します。


また極端な場合には、腟全脱をおこし、子宮頸部を露出し、ときには子宮脱を併発して子宮壁を露出することがあります。

治療法:



腹圧を減じ尿や糞をあらかじめ排除したうえで整復する。


はなはだ軽度のものは、その後陰門部を手術的に閉鎖するだけで治癒しますが、通常は再発するので腟壁固定手術が必要です。


汚染した腟壁は整復の前後に十分に洗浄し、時には収斂剤を使用します。


整復後は比較的前低後高の床面に立たせ、あるいは脊髄硬膜外麻酔によってできるだけ長時間努責を防ぐ(通常12~24時間)ことが行われています。


腟壁がすでに絞扼されて壊死や高度の浮腫をおこしている場合には、外科的に摘出する以外に方法はありませんが、多くは爾後の分娩が困難となり、経済価値は失われる。


膀胱が反復して腟外に脱出してくる場合には、開腹手術を行って膀胱広靱帯を固定すると効果が上がることがある。

陰門裂傷(rupture of the vulva)



大部分は分娩時におこり、時には腟前庭の外傷を含み、さらに腟破裂と併発することもある。


本症は各種の動物に発する。

症状:



軽度の場合には周囲の皮膚、筋肉の一部などの損傷が見られるのみですが、高度の場合は多くは陰門上連合superior commissure of vulvaの完全な裂開によって会陰破裂perineal ruprureをおこし肛門と開通する。


この際には通常感染をおこすので陰門腟炎vulvovaginitisとなる。

治療法:



手術的に閉鎖する。


陳旧で肉芽組織の存するもの、あるいは肛門と陰門間にすでに粘膜による連絡を生じているような場合には、切開によって新しい創面をつくり、別々に縫合する。

キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)