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腰萎 ~ 肛門、膀胱、尾および後肢の中枢性麻痺


腰萎(posterior weakness)



種々の原因によって、主として馬、羊、山羊、その他牛、犬にもみられる後軀の虚弱ないし麻痺を一括して呼ぶ症候名で、腰麻痺lumbar paralysisともいわれます。


主として腰椎の骨折、脱臼、椎間板ヘルニア、強直性脊椎症、腫瘍、結核、その他の感染症、寄生虫(Setaria digitata)の迷入によって、腰髄またはその神経根に圧迫、出血、浮腫、炎症、軟化、髄膜炎などが生じ、不全麻痺または麻痺が現れた状態です。


しかし、同様の症状は、腰臀部の筋肉の疾患(外傷、リウマチス、中毒、感染病における筋断裂、急性の筋変性、実質性筋炎、筋色素尿症など)、仙骨または骨盤の骨折、仙腸関節の離開、腹部大動脈または外腸骨動脈の塞栓などの際にも現れます。


不全麻痺では、起立困難、後肢の運動失調を呈し、腰がふらつき、運動蹌踉、肢がもつれ(いわゆる十字部跛行)、後退や旋回が難しく、速歩・駈歩を嫌う。


尾の挙上が困難または不可能になる。後軀の痛覚が鈍化し、反射は低下または亢進する。


完全麻痺では、後軀の知覚麻痺、筋の痙性または弛緩性麻痺がおこり、大動物は犬坐姿勢dog-sitting postureをとり、起立できず、小動物は辛うじて前肢で後軀を引きずる。


後軀の反射は著しく抑制され、腰髄の損傷は、膀胱、直腸、陰茎、尾の麻痺を伴います。


診断には直腸検査、X線検査、筋電図検査が役立つことがあります。原因および病変の軽重によって予後はことなりますが、完全回復を望めないことが多い。


原因が明らかになれば、その除去に努める。

肛門、膀胱、尾および後肢の中枢性麻痺(central paralysis of the anus, urinary bladder,tail and hindlegs)



仙骨管内を走る馬尾cauda equinaの完全または不全麻痺に起因して、その分布する臓器に異常が発生する。


脊髄の尾側端の障害が時々合併する。


発生:


主として雌の成牛に発生し、その神経麻痺の患畜の約60%を占める。


原因:


仙骨領域に加わった鈍性の外力による神経の挫傷と、仙骨管内の炎症その他に由来する圧迫麻痺が実体です。


したがって外傷性には仙骨自体の損傷(出血、亀裂、骨折)、仙骨と尾椎の移行部の損傷(血腫、髄膜の牽裂、椎骨の脱臼、髄核の脱出)が原因になります。


外力としては仙骨部を強打する、牛を起立させるため尾を強く引張る、尾根を乱暴に折りまげて牛を追い立てる、難産の際に大きな胎児を強く牽引する、などの人為的な外力、発情した雌牛の相互の駕乗、大型の雄牛の駕乗、などが挙げられます。


尾の付着部が深く凹んでいる牛には、仙骨部の損傷が生じやすい。


腰仙椎間に行う硬膜外麻酔に起因する神経炎、神経の変性または神経周囲の感染、また腰仙部の髄膜の限局した白血病性腫瘍、硬膜外腔を迷走するウシバエの幼虫などは、圧迫麻痺の原因となります。


症状:


外傷に起因する例では、突然疝痛様の症状(不安、短切な歩様、起臥の反復、呻吟、発汗)を呈し、後肢は運歩蹌踉、飛節と趾関節を過度に屈曲し、運動失調と広踏が認められる。


尾は力なくブラブラと揺れる。同時またはその直後に、多少とも重度の麻痺が、肛門(弛緩)、直腸(糞が充満)、および膀胱(尿が充満)におこる。


後肢の不全麻痺は急速に麻痺に進み、犬坐姿勢、寝たきりになることがあります。


圧迫麻痺に起因する場合は、これらの機能障害が徐々に進行し、悪化するのがふつうです。また排糞、排尿は困難で、まったく受動的にまたは腹部圧迫の助けを借りて辛うじて実現する。


排糞時に尾が挙上しないため尾根がよごれ、尿は滴るか、または少しずつ流出する。

予後:



8~10日の間に改善の徴候が現れなければ、そのあと治癒はほとんど期待できません。


排尿障害の持続は膀胱破裂か尿路上行性の感染かをひきおこす。比較的軽症で尾の麻痺と後肢の軽度の不全麻痺がある程度でも、放牧による飼養の経済的効果は疑わしい。


これに対して、尾が麻痺していても合併症がなければ単に美容上の欠陥にとどまる。

診断:



腰仙部に限局した中枢性の不全麻痺または麻痺は、安静時および運動時の牛の挙動を観察し、外傷性か否かは稟告(発情中、発情の終了直後)と仙骨部の背線あるいは尾根の擦過傷などから判断する。


神経の傷害の範囲は、外傷性の場合は、皮膚の知覚の検査(肛門、外陰、尻、乳鏡、大腿内面)と、時には直腸検査によって判断する(ジェリー様物の集積、捻髪音、仙骨の骨折の辺縁触知は外傷性、腫瘍性の巨大な腸骨リンパ節は白血症-血液検査を併用)。


ウシバエの幼虫による麻痺は、ほとんどすべて若い牛におこり、冬期に多い。

鑑別診断:



病初に尾の麻痺が認められれば、大多数の例において、腸閉塞その他に起因する疝痛とは明らかに区別できる。


またアセトン血症または骨軟化症の例に時々みられる不全麻痺では尾の動きに変化がない。

治療:



新鮮、非開放性、外傷性の馬尾の麻痺で、ビタミンD剤の硬膜外腔への注入(3~5日間毎日、なるべく抗生物質と併用)が奏効することがあります。


必要があれば人為的に排糞、排尿をを行う。


排泄の障害が重度のものは屠殺します。

予防:



尾の付着が深い形質は遺伝性なので、繁殖には供用しない。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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