晩冬から雄は他の雄を入れずテリトリーを作り、激しく空中で追いかけゴロゴロ、ガアガア、キイキイと声を出して争います。アラスカのような3種の雷鳥が一つの山で発見できる処では、2種類が近接して繁殖します。
このような場合には普通各種の間に高度の違いが起こります。すなわちカラフト雷鳥は森林限界に接して、雷鳥は中程の斜面や、低い嶺に、そうして尾白雷鳥は荒い岩のある急斜面とか、氷河や雪原に接した玉石の散らばる嶺に生存しています。
凡ての雷鳥は、雪が溶けると直ぐ地面に巣を作ります。6ないし10個産む卵は3週間抱きます。孵化は6月の終わり頃から7月の始めに掛けてです。カラフト雷鳥の雄は家族と一緒に留まり、雛を守りますが、尾白雷鳥および雷鳥は雛の保護は雌にすっかり任せます。
雛は驚くほどの速さで成長します。孵化後は9~10日で巣を離れ、そうして彼らが最初の完全な飛行翼を身に付ける8~10週になると、うまく飛びます。
秋は休みのない時期です。群れを作り、分散し、また形づくります。そうして鳥は慣れない高山を動き廻ります。10月になると彼らの移動は1つの型にはまってきます。即ち、雌は雌同士で群れを作るようになり、森の中へと段々下降して来ますが、雄は森林限界に接して留まります。
秋の移行の程度は場所によって違いますが、片道150~240kmの移動がどのアラスカ雷鳥にも最長距離となります。
雷鳥は冬は放退性で、11月から3月迄の間は一つの隠れ場の斜面とか、食物畑から、他の場所へと不定に移動します。鳥は冬の間は全く群居を好み、ふつうは雪の中でお互いに接近して採餌し、休みます。
此れが春になりますと、時に数千を数える雷鳥の群れが目的のある移動、即ち、4月中及び5月初めに、それらの繁殖地に帰ります。此の巨大な雷鳥の群れは、多分渓谷や細い山道の煙突効果で出来るのでしょうが、夏の地域が来れば各々の雄は白と褐色のツンドラの中で自由に活動ができる自分の領分を求めながら、速やかに分散してしまいます。
雷鳥の食物は雪が大地を覆う時分には殊の外単調になります。柳の芽、小枝、小さい樺の木、柳のネコ、等で春の繁殖期迄此の餌が続きますが、繁殖期になりますと雪は溶けて、昆虫、新葉、花などの混合物を食べるようになります。
昆虫類を食べるということが有精卵を産む上に非常に大切な事でして、アイスランドのような年中氷と雪に覆われている処ででも、6月以後の繁殖期の暫くの間、やはり昆虫が発生して、ここに巣作りをする水鳥の良き餌になっています。
雷鳥は夏には植物の花香を食べます。また時としては毛虫とか、甲虫などを豊富に食べられる時もあります。秋になり昆虫がいなくなり、植物も冬眠に入りますと、餌は再び種、芽、と変わってきます。
10月半ばになれば、大抵の雷鳥は冬の食物になります。
雷鳥にはまた其の自然界における存在数が周期的に変化する事が知られています。9月または10月をピークとしてリズム的に数が変化する事ですが、此の理由は神秘として未だ判明していません。
以上の生態の部分はアラスカの雷鳥学者ウイーデン博士の記録です。
エリマキ雷鳥と尾長雷鳥はアメリカで毎年個人1人で、80羽位雛をとってる人もあり、また、政府機関ででも増殖が行われており、繁殖法は大量増殖迄は行かないにせよ、一応確立されております。
此れ以外の雷鳥については、ほんの数人の人が繁殖に成功した例がある程度で、雷鳥は雉類の中では一番難しいのです。
雷鳥の生態(特にPtarmigansについて)
