雷鳥は雉科の鳥ですが、鼻孔まで羽がある事と、脚が低いことから、別の大きい亜科を形成しています。北半球の北部に産し、ユーラシア大陸に11種類、北米に7種類あり、全部で11属あります。
英名Ptarmigansというのは夏冬で羽色が変わる物で、Grouseは年中同一羽色のものをいうのですが、此の区別は厳密ではありません。Grouseには両大陸にまたがる物はないのですが、尾白雷鳥は北米のみに産し、他の2種のPtarmigans、即ち、カラフト雷鳥とライチョウは殆ど極地性のものです。
雷鳥の化石は4千万年前のものが北米から発見されていますが、元来雷鳥はアジア起源のものとされています。前述の通リPtarmigansには3種あり、北半球の凡てにわたってアルプスとか北極圏のツンドラ地帯に遺留分布をしています。
カラフト雷鳥(Willow Ptarmigan:Lagopus lagopus)はアラスカの高い樹のない地方の殆ど至る所におり、またカナダ、スカンジナビア、フィンランド、ロシアの全土を通した広い地域を占めております。
有名な赤雷鳥は今ではこのカラフト雷鳥の1種だと言われており、此れは英国にいます。雷鳥(Rock ptarmigan:Lagopus mutus)は、アラスカ、カナダ、スカンジナビア、スコットランド、北ユーラシアに生存しております。
また、グリーンランドからアイスランドの大抵の処におり、日本のは亜種になりますが、日本アルプスに少数おります。スイス、スペインにもいます。尾白雷鳥(White-tailed Ptarmigan:Lagopus leucurus)は厳密に北米にのみ生存し、アラスカの高所、ワシントンの南ユーコンの中央部、それから北方ニューメキシコ、コロラドなどにいます。
また北欧、シベリアにはクロライチョウ(Black Grouse:Tetraomuta tetrix)、オオライチョウ(Capercaillie :Tetrao urogallus)がおり、後者は雷鳥中最大で、七面鳥位の大きさが有り、これらは常緑の森林にいます。
北海道にはエゾライチョウ(Tetrastes bonasia)がおり、シベリヤ東部にはカマバネライチョウ(Falcipennis)がおります。また、アラスカ、カナダ、北米には其の特産のエリマキ雷鳥(Ruffed grouse:Bonasa umbellus)、ソウゲン雷鳥(Greater Prairie Chicken:Tympanuchus cupido)、オナガ雷鳥(sharp-tailed Grouse:Pedioecetes phasianellus)がおりますが、GrouseはPtarmiganより南部で森や草原にいます。
エリマキ雷鳥は特に有名で、其の面白い習性がシートン動物記に書かれており、森の中で大きい太鼓のような音をたて、又尾羽を扇状に立てるディスプレーは不可思議です。それからエリマキ羽を立てます。
ソウゲン雷鳥やオナガ雷鳥には色彩の美しい喉袋があり、普段は見えないのですが、ディスプレーの際に尾羽を立てると同時に頸の両脇の羽の中から袋をふくらませて来て、特有の音を出します。
北米、アラスカのハリモミの樹林には特有のハリモミ雷鳥(Spruce Grouse:Dendragapus canadensis)がいます。Ptarmigansは爪を除き足指迄羽で覆われていますが、Grouseは足指だけは羽はありませんが、スノーシューズと称する櫛状の突出物があり、此れが雪の中を歩きやすくします。
Ptarmigansの翼は年中純白なのですが、体羽は冬だけ純白になります。即ち、4月初め頃から純白の冬羽に頭、頸、から始まり、黒点が点々と現れ、5月10日頃急速に夏羽に移行し、背中は全面に黒、黄、褐色の縞が覆ってきます。眼の上の赤色部も顕著になります。腹部の換羽は最後におこります。
一方秋の冬羽への移行は8月10日頃から白い冬羽が見えて来ます。まず、足指を覆う羽が純白となり、次に腹部が白くなります。背の方は頸の方から白い羽が見えます。
9月下旬には背にも白色部が大分出てきます。10月中旬には背の所々灰色の斑点を残す以外は純白となり、此の状態がとても美しく天来の神品だという印象を強く受けます。
雷鳥類について(Ptarmigans and Grouse)
