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その他の有機塩素剤 ~ ヘプタクロール・クロールデン

その他の有機塩素剤 ~ ヘプタクロール・クロールデン 家畜中毒

 
 

ヘプタクロール

 
 
Heptachlor 1949年にアメリカで生産され、本邦では昭和31年以来使用されています。
 
 

性状

 
 
科学名は1,4,5,6,7,8, 8-heptachloro-3a, 4,7,7a-tetrahydro-4, 7-methanoindene
 
 
純粋な化合物は自己結晶樟脳様の香があり、有機液剤には溶け、光、空気、熱、湿気には安定ですが強アルカリでは効力が少なくなります。
 
 

粉剤

 

ヘプタクロール2.5%を含む。

 
 

原因

 
 
ネズミのLD₅₀は90mg/kgで、経皮中毒はウサギで2000mgで、他のドリン剤よりも毒性が少ないといわれます。
 
 

クロールデン

 
 
Chlordane 本剤はDDT、BHCに次ぎ、アメリカのハイマン氏により発見され、殺虫効果は1945年カーン氏の発表によるもので、1018と称せられ、C₁₀H₆Cl₁₈の化学式から由来します。
 
 

性状

 
 
DDT、BHCと同じく多塩素化炭化水素で1.2.4.5.6.7.8. 8-octachloro-4, 7-methano 3a,4,7,7a-tetrahydroindaneと呼ばれるものです。
 
 
粗製のものは黒褐色の液体ですが純粋なものは粘稠でほとんど無臭の淡黄色の液体で、比重は1.55~1.62、水に不溶ですが、一般の有機溶剤に溶けやすく、ケトン、エステル、エーテルなどには完全に溶解します。
 
 
また石油にはDDT、BHCに比し非常に溶けやすい。
 
 
またDDT、BHCと同じくアルカリに逢うと塩酸を放って効力が弱まる。薬剤には精製品と粗製品があり、農薬としては後者(テクニカル)を用いる。
 
 

クロールデン剤の種類

 
 

(a)溶液

 

暗褐色の液体で特臭があり、クロールデン2%を含み主として防疫、畜舎、家庭用として総ての衛生害虫に用います。

 
 

(b)粉剤

 

防疫、農用に供されますが、大体5%のものが多く使用されます。

 
 

(c)水和剤

 

農用で40~50%のものを用いる。

 
 

(d)乳剤

 

前者と同じく農用で40~50%が多い。
 
 
水和剤、乳剤の有効濃度は0.05~0.2%内外です。

 
 

殺虫力と毒性

 
 
本剤は接触、消化の他呼吸毒としての効果がありますが、作用はむしろ緩慢で、DDTとBHCとの中間にあります。
 
 
然しこの緩慢な揮発性が本剤の特徴で殺虫力の持続性が長く家庭用として壁に撒布した薬の効果は優に数か月に亘るといわれます。
 
 
蚊に対しクロールデン、BHC、DDT、の残効作用を見るため噴霧直後と16週後の100%落下時間を比較すると、BHC10に対しクロールデンは3、DDTは1の割合であり、クロールデンはBHCに比べ16週後でも約1/3、DDTは1/10の時間で落下するという。
 
 
このことはDDTの残効力は殆ど不変ですが、クロールデンは僅かの減退があり、BHCでは著しく減少することになります。
 
 
またハエの成虫に対しDDTとクロールデンの毒力を比較すると、24時間以内に95%殺すに必要な薬量は、DDT0.2%溶液、クロールデンは0.05%溶液で足り、DDTの3~4倍の強さを有することになります。
 
 
人のシラミにはDDTの半分の時間で完全に麻痺し、あるいは24時間絶えず薬を施すと、クロールデンは0.0005%で完全に絶滅しますが、DDTは0.05%でも80%の致死率に過ぎず、これはDDTより遥かに殺虫力が強いことを示しています。
 
 
家畜用としては犬のダニに著効があり、0.25%の水性乳剤に犬を浸漬させるだけで、ダニが絶滅し、あるいは適当な乳剤を牧場の家畜に撒布すると2週間以上も、ハエ類の襲撃から逃れるという報告もあります。
 
 
また、クロールデンで死んだイナゴを数日間成鶏に与えても何等の障害を示さず、5%のクロールデンを含む石油の水性乳剤中に犬を浸漬させても無害であつたという。
 
 
これらのことはクロールデンが衛生害虫に対しては殺虫力が強いが、温血動物に対しては、DDTに比し毒性が少ないということになります。
 
 
ウサギの経皮中毒は<780mg/kgです。

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