鉛・性状
鉛の鉱石は、方鉛鉱PbSの形で天然に存在し、多くは他の鉱石たとえば鉛、銅、亜鉛、アンチモンおよび鉄等と共に産出します。
而して鉛鉱を焼灼すれば一部は鉛となり、一部は酸化鉛となり、後者は木炭と共に熱すれば還元して鉛となります。
鉛は融点327°、比重11.254の軟かい金属で、空気中では表面が酸化鉛となり暗色となります。木炭上で加熱すれば中央暗黄色で周辺静白色の残渣を生じこの際ナトリウムを加えると白色真珠様の球を生じます。
これを硝酸に溶解し置き硫酸を加えると白色沈澱を見る。
有機酸、アルカリには空気を通ずるときに溶けます。これは先ず水酸化鉛を生じ、これが有機酸またはアルカリに溶けて有機酸塩または鉛酸塩Na₂PbO₂を生ずるためです。
鉛は純水には溶けませんが、酸素または酸素と炭酸ガスを含む水には溶け、水酸化鉛Pb(OH)₂または2PbCO₃・Pb(OH)₂として溶存します。
この際塩化物、硝酸化物、アンモニア並びに腐敗物などのあるときは鉛の溶解が容易です。天然水に永く触れると1ℓ中12mgの水酸化鉛を証明します。
鉛は球状、板状、管状、綱状として広く利用されますが、食器、飯槽などとすることは避けなければなりません。昔の水道の引込管は鉛ですから使用上注意を要します。
毒物上関係のある鉛化合物は次の通りです。硝酸塩、塩化鉛、酢酸鉛等は水に可溶性であるから、中毒を起しやすく、また過酸化鉛、酸化鉛、鉛丹、炭酸鉛等は水に不溶解ですが、胃および腸液には可溶性であるから、内用によって同じく中毒します。
これには酸化鉛Lead oxide、PbO、亜酸化鉛lead suboxide、Pb₂O、三二酸化鉛lead sesquioxide Pb₂O₃、鉛丹red lead、Pb₃O₄、過酸化鉛lead peroxide、PbO₂等があり、空気中で鉛を熱する時の温度の高低によって生じます。
密陀僧lithargeは酸化鉛の一種で鉛を熱し黄色粉末とした金密陀massicotを更に溶融し冷却して作った赤黄色の物質で陶磁器の釉薬、ペンキの乾燥剤などに用います。
酸化鉛は一般に水に溶け難く硝酸、酢酸ならびに塩酸には溶け易く、脂肪と合すれば仮漆、プラスター及びセメント等を生ずる性質があります。
鉛丹(赤酸化鉛)は金密陀を400°に熱し得たもので美麗な燃えるような赤色あるいは橙赤色を呈し、酢酸、塩酸および硝酸に溶解し赤色顔料、メッキ、プラスターに用いる。
2PbCO₃・Pb(OH)₂は塩基性炭酸鉛で、他にPbCO₃・Pb(OH)₂、4PbCO₃・2Pb(OH)₂・PbOがあります。
鉛白は顔料として用いられますが有毒です。
酢酸鉛Pb(CH₃・CO₂)₂・3H₂Oは水によく溶解し甘味を有するため鉛糖ともいい鉛塩中最も普通のもので、薬用として最も多く使用されます。
酢酸塩は無色透明の結晶、あるいは白色結晶性の塊で、酢酸臭と、始め甘く往々収斂性の鉄味があり、大気中では僅かに風化し水、アルコールに溶け易い。
酢酸鉛3分、酸化鉛1分に水を加えて比重1.23~1.24としたもので、無色透明ですが、空気中の炭酸に遇えば白濁します。
医業上外用とします。
農薬剤として広く用いられ、本邦でも従来家畜の中毒例が報告されています。

