サポニン(Saponin)は一般に毒性があり、特に強烈なものをサポトキシンSapotoxinといい、比較的無毒なものと区別します。
主として雙子葉竝に単子葉植物に含有し次の性質があります。
(1)水溶液は永続性の泡沫を生じる。
(2)水溶液は辛辣味があり、血球に対し溶血作用があります。
(3)皮膚および粘膜を刺戟し炎症を起こす。
(4)健康な腸粘膜からは殆ど吸収されませんが、炎症や潰瘍があると吸収されて重症の中毒を起こします。
サポニンを含む植物およびその種類を示すと次のようです。
(1)ムギナデシコ ムギナデシコサポトキシン agrostemma-Sapotoxin
(2)ジギタリス ジギトニン Digitonin、ギトニン Gitonin
(3)サイカチ サイカチサポニン Gleditschia-Saponin
(4)ヤツデ ファトシン α-Fatosin、β-Fatosin
(5)サボンソウ サボンソウサポトキシン Saponari-Sapotoxin
(6)オニドコロ オニドコロサポトキシン Dioscarea-Sapotoxin
(7)ムクロジュ ムクロジュサポニン Sapindus-Saponin
(8)エゴノキ エゴサポニン Egosaponin
(9)キキョウ キキョウサポニン Kikyo-Saponin
(10)トチバニンジン パナックスサポニン Panax-Saponin
(11)ツバキ ツバキサポニン
サポニン中毒の例は、ムギナデシコに多くまた南方ではGrewia Microcosによる馬の中毒例があります。
ムギナデシコはサポトキシン(C₉H₃₀O₁₀)が主成分で、他にアグロステマ酸があり犬、馬、豚、犢、家禽の中毒例があります。
症状
サポニンは原形質毒で局所の充血、腫脹、膿瘍を生じ出血性炎症を起し、吸収されると溶血作用甚しく且つ神経系の機能障害を招きます。
主徴は嚥下困難、流涎、咳嗽、重症疝痛、甚しい下痢、血尿、蹌踉、痙攣、麻痺などを起します。
慢性中毒は豚に多く初期脱力、慢性下痢ならびに神経障害を来し漸次衰弱します。
療法
先ず飼料の変更をし、胃腸炎には粘滑包摂薬、麻痺には興奮剤を用いる。