生理的診断
アルカロイド、配糖体などのあるものは実験動物に対し特異な中毒症状を発現します。
故に抽出物を注射してその反応を検することにより極めて確実に診断し得るものがあります。殊に科学的に明らかな反応がなく毒物が本診断の範囲に在ると思われる場合は一応検査する必要があります。
おもな反応は次のようです。
ピクロトキシン
体重50gの蛙にピクロトキシン0.5mgを皮下に注射すれば40分後、両脚を左右一直線に伸ばす特異な痙攣(ピクロトキシン姿勢)を起します。
ピクロトキシン(Picrotoxin)C₃₀H₃₄O₁₃はピクロチン(Picrotin)C₁₅H₁₈O₇1分子とピクロトキシニン(Picrotoxinin)C₁₅H₁₆O₆1分子の複合物で、後者は痙攣毒であり、前者は無毒です。
(1)チクトキシンCicutoxin(ドクゼリ、オオゼリ等)
(2)コリアミルチンCoriamyrtin(ドクウツギ、Coriaria myrtifolia)
(3)シキミンSikimin(シキミ)
(4)キナンコトキシンCynanchotoxin(イケマ)
(5)ピクロトキシンPicrotoxin(Anamirta paniculata)
(6)オエナントトキシンOenanthotoxin(Oenanthe crocata)
ジギトキシン
蛙の心臓を露出し、両大腿部の皮下に可検液を注射し、爾後心臓が収縮して静止するまでの時間を測定します。ジギトキシンの存在によって長くも30分以内に静止します。
注射後30分時以内に静止しない場合は更に別の蛙を用い注射量を増加して試験を反覆します。
ストリキニーネ
体重約30gの蛙の皮下に硝酸ストリキニーネ0.005mgを注射すれば反射神経の軽い興奮を促し脊椎に触れると衝動を起します。
注射量0.01mgに増加すれば長時間に亘って上記の症状が著明に現われます。
更に増加して0.02~0.05mgに至れば、弱い刺戟によっても忽ち強直を起します。この反応は蛙よりもラットの方が鋭敏です。
ブルチンはストリキニーネと同様ですが稍々弱い。
アトロピン
水溶液を猫の眼瞼に滴下すれば暫時で著明な瞳孔散大を見、且つ比較的永く持続します。
ニコチン
体重約30gの蛙にニコチン0.1mgを皮下注射すれば数分後呼吸困難となり胸部に振戦を来し、次いで両脚を脊部に圧縮するような姿勢をとります。
0.2mgならば直ちに呼吸を停止し、1mgでは両脚強直して前方に突き出したような姿勢をとります。
クラリン
30~50gの蛙の皮下に注射すれば四肢の随意運動を、次いで呼吸運動を停止します。
クラリンの0.01mgまたはそれ以下でも反応があります。
コカイン
蛙の呼吸麻痺による斃死、瞳孔の散大、局所麻酔を以て判定します。
コニイン
試験動物の末梢神経麻痺を検する。
フィゾスチグミン
猫の眼に溶液を点滴して瞳孔の縮小反応を検する。

