動物に発生する関節炎は、多くは細菌感染によるもので、滑膜および関節面の炎症がまず発現します。跛行および関節部の局所痛、帯熱、腫脹が特色です。
主に急性に発生します。
原因
病原菌の侵入経路には、次の三つがあります。
①関節の透創
②隣接する軟部組織または骨からの感染の波及(たとえば牛、豚、羊の趾間腐爛foot rotの蔓延)
③血行性hemato genous
血行性感染のなかには牛の乳房・子宮の化膿巣、横隔膜膿瘍、心内膜炎、あるいは豚の尾の咬創・去勢創の化膿巣からの転位などの例がありますが、馬・牛・羊の初生畜に発生する膿毒敗血症による多発性関節炎もまた、これに属します。
血行性感染以外の場合には、ブドウ球菌、レンサ球菌、大腸菌、Corynebacterium pyogenes、壊死性桿菌が原因となっていることが多い。
初生畜の血行性感染では、大腸菌および連鎖球菌はいずれの種類の家畜からも分離され、また初生駒では、馬パラチフス菌、Corynebacterium equi、初生豚では豚丹毒菌、子牛ではサルモネラ属の菌が原因となります。
これらの菌は臍帯から、または子宮内において感染します。
その他Mycoplasma、ウイルス、真菌が原因と考えられる症例もあります。
病理
細菌が関節に侵入して発炎すると、滑膜は肥厚し、滑液は増量します。滑液は白血球の混入によって混濁し、感染が制圧されない時は後に膿性になります。
関節軟骨のところどころが侵食されて、その下にある骨が露出し、さらに、その骨組織も破壊される(化膿性滑膜炎)。
急性症では感染が蔓延して、関節の構造が破壊され、さらに関節周囲の靱帯、腱まで冒されます(全関節炎)。
また、亜急性および慢性の症例では、骨の新生、関節周辺の石灰沈着がおこります。
多発性関節炎の場合には、漿液線維素性炎であることが多い。
症状
閉鎖性の関節炎では、炎性滲出物のために関節が腫脹し、開放創に起因する場合は滑液(膿汁)が漏出して、創口の下縁に付着して、腫脹は閉鎖性ほどではない。
触診すると関節は発熱し(発赤し)、疼痛が強く、受動運動を嫌う。犬、猫では患肢を上げて歩行しますが、牛・馬では跛行が著しく、負重が不可能で横臥するようになります。
炎症が関節周囲におよべば(関節周囲炎periarthritis)、関節の輪廓はますます不明瞭となり、フレグモーネも併発します。
この腫脹は閉鎖性に著明ですが、ついに自潰排膿すれば緩和します。
膿の貯溜による関節包の拡大がつづけば、拡延性脱臼の原因となり、関節包・関節軟骨・骨端骨質の破壊がすすめば、破壊性脱臼の原因となりうる。
炎症が長期におよべば、関節周囲の増殖性変化、骨相互の癒着、関節包の肥厚などにより、関節の屈伸の不自由、拘縮、強直などをおこし、慢性不治の跛行を後遺します。
また自潰または切開により排膿されても、その後の処置が十分でない場合には慢性化し、瘻孔を形成します。
開放創(関節腔に達するもの、透創)による感染により、関節炎が発生する場合には、第3日までに感染が確立し、第5日までに全身症状(発熱、頻脈、呼吸数増加、食欲不振)が現れます。
馬では筋の震顫、体表の発汗がみられ、重症では全身状態が急速に悪化し、横臥して呻吟します。しばしばフレグモーネが併発し、敗血症ないし毒血症のため死亡することが少なくありません。
初生畜の多発性関節炎polyarthritisは同時に数個の関節が冒されることが多く、重度の跛行を呈し、また起立不能に陥ることがあります。
臍静脈炎omphalophlebitisを併発し、肝臓・心内膜・髄膜に病巣が形成されることが多い。
予後
急性化膿性関節炎は多くは全身症状を伴い、予後は不良で放置すれば死亡します。
慢性関節炎および関節強直などの後遺症がのこったものは、運動が著しく阻害され、家畜の価値を損ないます。
治療法
受傷直後、創傷からの細菌感染を制圧し、また滑液の流出を防ぐ手段を講じます。
細菌の侵入を防ぐためには、創口の周囲を清潔にし、非刺激性の消毒薬で洗浄し、防腐包帯をほどこします。
すでに関節腔内に侵入した細菌の抑制には、化学療法が行われますが、薬剤の滑液内移行が少ないため容易ではない。
通常は広スペクトル抗生物質、ペニシリン+ストレプトマイシンあるいはサルファ剤を非経口的に投与します。
この場合、関節内注入は通常行いません。
厳重な無菌操作によって、初期に関節内液を吸引除去して疼痛を緩和し、滑膜の伸張を防ぎ、あわせて病原菌の同定および薬物感受性の判定に役立てます。
ついで関節腔内を緩衝液、生食水あるいは無刺激性の消毒薬などで洗浄したのち、適合する化学療法剤を注入します。
この治療法は関節液が正常になるまで続けます。
しかし以上の治療法が奏効しない時は、関節を切開して排液をはかる。切開後に強力に化学療法をつづけます。
化学療法に用いられる薬剤には、多種のものがあり、その選択は投与に対する反応、畜患の薬歴などを参考に慎重に行う必要があります。
投与法は早期大量の衝撃療法が功を奏することがあります。
感染が制圧されるまでは、包帯をほどこして、関節の動きを制限し、その後は運動によって関節の機能回復と強直防止につとめます。
強力な化学療法によって、局所の化膿が制圧されたならば、治療第5日頃から、補助的手段としてステロイドホルモンおよび蛋白質分解酵素を用いると、関節炎の慢性化を防ぐに役立ちます。
しかし、ステロイドホルモンは著明な抗炎症作用があって、滲出などを抑制しますが、一方感染に対しては、生体の防御機転を減退させる性質をもっているので、十分なる化学療法の併用が必要です。
またフェニールブタゾンphenylbutazone(抗リウマチ剤)の投与(馬では1g、静脈内1~2日間、牛では9mg/kg内服、以後48時間ことに半量)は痛みを緩和し、関節の動きを正常に保ち、治癒をうながします。
酵素療法(非経口的投与または関節の開放創内注入)は膿の除去に役立ちます。
冷罨法、温罨法その他の理学療法の併用は、操作が煩わしいですが、鎮痛および腫脹減退に効があります。また慢性症では擦剤が応用されます。
起立困難のため長い間横臥しつづけると、褥瘡が発生するから対策を講じなければなりません。特に幼駒ではその場合、採食、吸乳ができないので衰弱は増大します。
その他、全身症状が現れたら、対症療法を行います。

