捻挫は、関節に生理的運動範囲をこえる過度の関節運動が強制されて、関節嚢、靭帯に伸張、断裂などの損傷を生じ、しかも外力が去ったあと、関節を構成する骨の相互関係が正常位に保たれているものです。
すなわち、一時的脱臼ともいえます。
可動性が一方向に制限された関節(一軸性関節)におこることが多く、自由な可動性をもつ関節(三軸性関節)では少ない。
馬では球節にもっとも多く、次いで飛節、冠関節、膝関節に発生し、犬では膝関節、腕関節、指関節の順で発生します。
病理
捻挫は非感染性の損傷で、軽症では、関節包および関節周囲組織の僅少な損傷にとどまりますが、重症ではこれらの組織が裂け、離断し、時には靭帯付着部の骨が剥離します。
また関節内に出血し(関節血腫)、滑液の増量、関節周囲の腫脹がみられます。
原因
急回転、急停止、滑走、転倒、障害飛越、打撲、穴に肢を踏み込んだ場合など、関節に、急激な無理な運動が課せられた場合にしばしば発生します。
特に球節は、着地の際もっとも衝撃をうけやすいので、捻挫が多発します。
また、不良肢勢、装蹄失宜も球節捻挫の誘因となります。
症状
本症は事故のあとに突発し、関節は熱を帯び、腫脹し疼痛があり、患畜は跛行を呈します。ふつうは運動痛、荷重痛を示します。
球節では突然の支跛を現し、球節の沈下が不十分で突球様の肢勢を呈し、起立時には負重を免ずる。
馬の飛節の捻挫の場合には、疼痛のため、飛節を屈することを嫌い、蹄尖を引きずり、あるいは肢を外転させます。
股関節のような厚い筋層で保護されている所では、腫脹も明らかでなく、症状も十分に触診できない場合も多く、寛跛行と診断されやすい。
ごく軽症の場合は、他動運動を課した場合にのみ痛みを訴えます。
特に受傷時と同様な機転をくりかえすと、疼痛を示します。たとえば球節では、屈曲に対し激痛を訴え、球節を内側(外側)に捻って疼痛があれば、外側(内側)の靱帯が罹患したことを示します。
増温と腫脹は発病直後はむしろ明瞭でなく、その後まもなく著明となります。球節の場合は半日~1日後から著明となり、球節の全周にわたって一様に発することもあり、時には内側、外側いずれかに強く現れます。
飛節でも著しい腫脹を示しますが、股関節は深部に存在するため、その腫脹の度合いは不明瞭です。これらの腫脹もまた、多少とも関節運動を制限するので跛行の原因の一つとなります。
腫脹が現れれば、損傷組織の判別が不可能となることが多いので、念のためX線検査を行い類症鑑別を行うのがよい。
捻挫により、関節周囲の靱帯の断裂、関節包の断裂、関節軟骨の挫傷、関節骨折をおこしたものは重症となります。
特に断裂や骨折を伴った場合には、関節の異常可動性を示すことがあります。X線あるいは関節造影法arthrographyにより詳細を診断した方がよい。
また、関節内障、特に関節腔内出血(関節血腫)を伴ったものは慢性化し、ながく跛行がのこります。捻挫から脱臼に移行した場合には、変形が著明となります。
治療法
本症は発生直後の治療が適切であれば、普通予後は良好です。
初期には滲出、内出血を防ぎ、疼痛を緩和することに主眼をおく。まず安静を第一とし、冷罨法を行います。安静のためには、患畜を休養させ、圧迫包帯、ギプス包帯(小動物)などの固定法を行います。
ブーロ液の冷罨法などは熱感、疼痛を緩和するので、初期著しく疼痛がある時に効果があります。次に滲出物、血液の吸収をうながすため、温罨法あるいは温巴布を行います。
炎症が軽度で疼痛が著しくない場合には、プリースニッツ罨法、あるいはその他の方法で温めた方がよい場合もあります。
球節捻挫では10日位で治癒します。
また二次的の腱・靭帯の断裂、脱臼の予防、あるいは内部の悪化を防止するためにも、絶対安静が必要です。副子包帯などにより固定し、関節の動揺を防ぐ。
急性期が過ぎ、症状が落ち着いたならば、マッサージを規則正しく行い、漸次運動を課して、癒着および筋萎縮の防止につとめ、後遺症を予防します。
治療が不徹底な時は、あとに亜急性ないし慢性の炎症症状がのこり、組織の硬結および腫脹が続きます。これに対しては、温熱療法およびマッサージが有効ですが、炎症が消褪した後にも長期の休養が必要です。
馬では、この時期に皮膚刺激剤の塗布、焼烙を行います。
筋肉、腱および靭帯の断裂は縫合し、関節骨折に対しては、固定法を試み、関節内の嵌頓物は剔除します。
ともに数週間の安静が必要であり、その後の機能回復のため、物理療法を行います。
関節周囲に損傷があれば、その治療を行い、特に感染予防につとめる。
予後
重症例の大部分を除いて、予後は良好ですが、いったん捻挫をおこすと、関節周囲組織の結合組織が増生して関節の運動範囲が狭くなり、機能の完全回復に至らないことが多い。
重症のもの、関節内障を伴うものは、長期にわたる関節痛、外傷性関節水腫、変形性関節症、関節強直などを後遺しやすい。

