放射線療法
放射線療法は理学的治療法のなかで、独立の一大分野を形成するものですが、ごく簡単に概略をまとめると下記になります。
細胞は、①増殖能力の大きいものほど、②細胞分裂過程が長く続くものほど、③物質代謝のさかんなものほど、④形態的および機能的分化の低いものほど、放射線に対する感受性が高い(Tribondeau-Bergonie の法則)。
したがって、腫瘍細胞、造血細胞、生殖細胞は殊に放射線の影響を強く受ける。細胞の構造のうちでは、核が放射線の作用をもっとも著しく受けるのです。
放射線治療の対象となる疾患としては、悪性腫瘍、皮膚病および炎症があげられます。一般に放射線に対する感受性の高い腫瘍としては、①造血組織の腫瘍(たとえばリンパ肉腫)、②上皮性の腫瘍、③腺癌などがあります。
これらのうちリンパ肉腫はもっとも高い感受性を有しますが、病巣が全身的に多発している時に腫瘍の全部を照射しようとすれば、動物を著しく過重の放射線にさらして大きな危険を招くため、放射線療法は行えない。
また原発病巣が限局している場合でも、すでに肺、その他の組織に腫瘍が転移しているならば、原発腫瘍の治療も意義を失う。今日までに放射線照射のみによって、すぐれた治療効果が得られた動物の腫瘍としては、犬の可移植性性器肉腫(いわゆるポリープ、Sticker肉腫)、犬の肛門周囲腫瘍、犬の皮膚ならびに牛および馬の眼に発生した扁平細胞癌(初期)などがあります。
なお、その他の多くの腫瘍についても手術と組合わせての術前術後照射の有用性が知られています。医療には常電圧X線、β線、γ線、超高圧X線、中性子線など種々のエネルギーの放射線が用いられていますが、現在獣医界でもっとも広く応用されているのは常電圧X線で、通常は200~400キロボルトの管電圧で発生したX線を使用する。
β線による治療はストロンチウム90(⁹⁰Sr)の薄い小板をあてがう方法によって、主として牛および馬の眼疾患(パンヌス、慢性角膜炎、角膜上皮腫、扁平細胞癌など)に適用されます。
γ線療法は従来、主としてラジウムradiumおよびラドンradonを用いて行われてきましたが、近年はヨード131(¹³¹I)の経口投与または静脈内注入による中毒性甲状腺腫の治療、コバルト60(⁶⁰Co)の針の組織内挿入または大量の⁶⁰Coによる遠隔照射による腫瘍の治療が人において行われており、獣医学領域では犬の可移植性性器肉腫に対する⁶⁰Coの応用が報告されています。
X線およびγ線療法を実施する場合には、生体に対する影響が甚大であるから、治療設備、装置、取扱者および患者については、放射線防御の観点から特別の考慮を払う必要があります。
超音波療法
超音波は振動数2万サイクル以上の音波で、人間の聴覚には感じない。医療に用いられるのは毎秒80万~100万サイクルのものです。
超音波療法は水晶、ロッシェル塩などの結晶に高周波交流を通じ、その周波数が結晶板の固有振動に一致した時に得られる著明な共鳴振動を利用するものであって、超短波によって超音波を誘発し、これを医療に応用する治療法です。
超音波を生体に投射すると、組織の深部に振動をおこして強力な高速度マッサージ効果を生じ、また熱が発生して鎮痛、消炎、殺菌の効果がある。
腰痛、筋肉痛、神経痛、関節リウマチ、椎間板ヘルニアによる後軀麻痺、静脈周囲炎などの治療に適用されます。導子の操作にはパラフィン油を塗って皮膚に密着させる直接法と、水を媒介とする間接法とがあります。
なお、超音波は、心エコー図法、超音波断層撮影法などの方法で、種々の疾病の診断に応用されています。

