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水分・電解質の必要量

水分・電解質の必要量 輸液法と栄養管理

 
 
補液には(ⅰ)体液の異常喪失、循環血液量減少に対する補充輸液(補充療法)、(ⅱ)著明な体液の減少は認められないが、酸-塩基平衡が乱れた時、その電解質の不足・不均衡を補正するための欠乏補充輸液、(ⅲ)十分な栄養素を経口(経腸)的に摂取できない時に行う栄養輸液とがあり、実際にはこれらを組み合わせて行う。
 
 
その場合、水分と電解質などの必要量をきめなければならないが、正常な生理作用に必要な水・電解質などの量を基準とする(維持輸液または基礎輸液)。
 
 

水分の必要量

 
 
1日の水の出入(尿、不感蒸泄、糞便中の水分、泌乳中のものでは乳量)をもとに計算される。総排泄量と尿量の割合は動物によって異なり、肉食獣では他の動物にくらべ、尿中に排泄される場合が多い。
 
 
正確には前日の尿量が、その翌日の輸液量の基準となる。
 
 
泌乳中の動物では乳量をはかり、失われる水分量を付加して必要量をきめる。しかし、動物では全尿測定が困難なため、血液のHt値から輸液量が計算される場合が多くいくつかの計算式が報告されている。
 
 
牛の1例は次のようです。補液量(l)=$\frac{体重(kg)}{13 X Ht}$ X (Ht-35)。
 
 
Htは輸液必要時のその患畜のHt値です。実際には輸液に伴うHt値の変化をみながら、さらに補正する。しかし家畜では十分な輸液が困難なため、不足はできるかぎり経腸的に補う。
 
 

電解質の必要量

 
 
健康な家畜の血中のNa、Kの量は、それぞれ約140~150mEq/l、3~5mEq/lです。しかし家畜の1日の必要なNa、Kなどの量は、種々の条件で左右されて正確にはわかっていない。
 
 
実際には、輸液の都度その過不足の程度を測定し、過不足の原因を考えてから補正量をきめる方がよい。
 
 

輸液法

 
 

方法

現在ではほとんど経静脈輸液が行われている。小動物では、前腕正中皮静脈または大伏在(サフェナ)静脈、大動物では、頚静脈が主に用いられる。

注射針または合成樹脂管を刺入・留置・固定するか、切皮のうえ、静脈を露出切開して合成樹脂管などを深く中心静脈まで挿入する方法とがある。

後者の場合は中心静脈圧が同時に測定できる。

(ⅰ)中心静脈圧(CVP):測定値の絶対値よりも、経時的変動に注目する。すなわち測定用管の0点を右心房の高さに合わせ、水柱の増減で測定する。

循環血液量の減少は減(⁻)へ、輸液の過多は増(⁺)へ変動する。

(ⅱ)輸液速度:大出血などで著しい循環血液量が減少した時は急速に注入することがあるが、ふつうはゆっくりと点滴し、24時間均等に持続させることがのぞましいが、看護や病状で速度を変えることもある。

点滴の速度は日量によってきめられる。等張または低張液では高張液より速度は早い。使用する装置により、それぞれ点滴数×時間=輸液量を知っておくと都合がよい。

 
 

注意事項

(ⅰ)輸液速度が急激すぎると循環血液量が急増し、呼吸困難、血液下降、肺うっ血などがおこる。特に腎機能障害などで排尿減少しているときは浮腫を誘発することもある。

輸液量が十分でない時は所期の目的を達しえない。

(ⅱ)高張液を急速に輸液すると、細胞内脱水がおこることがある。また糖やアミノ酸などの諸成分は急速輸液によって尿中に排泄され、所期の効果をあげ得ない。

(ⅲ)輸液剤に含まれる薬物の副作用、配合禁忌に注意する。

(ⅳ)注射針などによる感染、血栓性静脈炎の予防

(ⅴ)固定を確実にし、体動などによって注射針などが抜けないようにする。

 
 

輸液剤

(ⅰ)水分補給:生理的食塩水(NaClも補給)、5%糖液、5~10%キシリトールなど。

(ⅱ)電解質補給:Ringer液、乳酸加Ringer液など。

(ⅲ)循環血液量増加:膠質溶液、低分子デキストランなど。

(ⅳ)酸-塩基補正:10%NaCl、10%KCl、1/6мNH₄Cl液(代謝性アルカローシスに用いる)、1/6M乳酸Na液(代謝性アシドーシスに用いる)、1.5%重曹液(代謝性アシドーシスに用いる)など。

(ⅴ)栄養輸液:糖類、アミノ酸剤、脂肪乳剤など。

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