Clostridium tetani(クロストリジウム・テタニ)の生産する外毒素。
鈍化されたトキシンを実験動物に筋注すると下行性に運動筋反射が興奮し、さらに全身痙攣によって呼吸困難で死亡する反応が観察されます。
この反応は感染動物における症状と一致しますが、投与から反応発現までに2~3日が必要です。この長い潜伏期を説明する現在有力な説では、筋注されたトキシンが付近の末梢神経に入り、軸索原形質内を徐々に上方に移動(retrograde axonal transport)して中枢神経系に入ってから作用するために作用発現が遅れると説明している。
テタヌス毒による反射興奮は多シナプス反射だけに認められ、単シナプス反射には認められない。作用機序にストリキニーネによる興奮の機序と類似して脊髄腹角細胞に対するRenshaw細胞系抑制回路や介在ニューロン系の抑制回路の抑制によると説明されている。
Renshaw細胞などの抑制系ニューロンの伝達物質だと考えられているグリシンを腹角細胞近傍へ局所適用すると、その腹角細胞を通る多シナプス反射は抑制される。
このグリシンの局所適用反射はストリキニーネによって抑制されるがテタヌス毒によっては影響を受けない。
したがって抑制性ニューロンか回路のそれ以前に作用すると考えられる。
またテタヌス毒の局所適用によってRenshaw細胞の活性が低下することも報告されている。
テタヌス毒(tetanus toxin) ~ 破傷風菌の生産する外毒素
