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マクロライド系抗生物質(macrolide antibiotics) ~ マクロライドはマイコプラズマとグラム陽性菌に抗菌力の強い抗生物質

エリスロマイシン 抗生物質

 
 
マクロライド、リンコサミド、ストレプトグラミン(MLS系抗生物質(MLS antibiotics))に分類されている抗生物質はいずれもグラム陽性菌とマイコプラズマに抗菌性を持ち、細胞内で静菌作用を示す点で共通しており、合わせてMLS系(中くらいの抗菌スペクトルを持つ)として分類されます。
 
 
ストレプトグラミン系ではバージニアマイシンだけが本邦でも用いられています。
 
 
マクロライドはマイコプラズマとグラム陽性菌に抗菌力の強い抗生物質です。家畜ではマイコプラズマによる疾病が多発疾病であるので、マクロライドは重要な薬物群になっている。
 
 

エリスロマイシン(erythromycin)

 
 
マクロライドは大型のラクトン環に水素基の欠けた糖がグリコシド結合した一群の抗生物質の総称であり、エリスロマイシンはその代表的薬物です。
 
 
水には難溶性ですが、有機溶媒によくとける。酸には不安定です。
 
 

抗菌作用

 
 
マイコプラズマとグラム陽性菌やクラミジア、レプトスピラに有効です。静菌作用で働くが、高濃度では殺菌作用も示す。ただし、殺菌速度はきわめて遅い。
 
 
もう一つの特色は宿主細胞内で抗菌作用を発揮する点です。
 
 
エリスロマイシン(pKa8.8)はpHが8以上で抗菌力が強いが、これは非解離型が細菌細胞内に移行し易いことで説明できる。グラム陽性菌は陰性菌の100倍もの濃度を原形質内に取込む。
 
 
エリスロマイシンはリボソームの50Sに結合して蛋白合成を阻害する
 
 

体内動態

 
 
経口投与すると一部は胃液によって分解されますが、残りは小腸上部で吸収され、4時間後に血中濃度が最高になる。筋注では2時間後に血中濃度が最高になる。
 
 
吸収後は全身に分布しますが、肝(時々、肝障害をおこす)・肺・腎への分布が多く、脳脊髄にはあまり分布しない。胆汁中への分泌量は多く、胆汁中濃度は極めて高くなる。
 
 
主な消失経路は肝における代謝であり、未変化のまま尿中に排泄される量は投与量の20%程度です。乳中分泌濃度も高い。
 
 
エリスロマイシンの動態学的係数は牛と犬で求められており、牛では半減期、t½=90分、分布容Vd=0.8l/kgですが、犬では、t½=60分、Vd=2l/kgとなっている。
 
 
これらの数字からは、組織分布性は高いが消失速度の速い薬物であるといえます。
 
 

副作用

 
 
毒性の低い薬物ですが、肝や腸管に障害を起こすことがある。
 
 
筋注では注射部位の起炎性がかなり強い。
 
 

塩類

 
 
エリスロマイシン塩基は主として筋注に用いられる。
 
 
チオシアン酸塩とステアリン酸塩は安定性が良いので経口投与に用いる。
 
 

その他の薬物

 
 

●タイロシン(tylosin)
 
 
動物専用のマクロライド系抗生物質。エリスロマイシンと類似し、交差耐性が認められる。グラム陽性菌への抗菌力はエリスロマイシンより弱いが、マイコプラズマに対してはマクロライドのうちで最も強い。
 
 
酢酸イソ吉草酸エステルは殺菌的に作用します。

 
 

●スピラマイシン(spiramycin)
 
 
マイコプラズマに対してはタイロシンに次いで強い。
 
 
マクロライドのうちでは半減期が最も長く、体内残存性が高いので有用性は高いが残留性も高い。注射と経口投与に用いる。

 
 

●テルデカマイシン(terdecamycin)
 
 
経口投与後の腸肝循環率が高く、腸管への分布性が良いので豚赤痢の治療薬として用いられる。類似薬のセデカマイシンは豚用飼料添加物

 
 

●その他のマクロライド
 
 
オレアンドマイシン(oleandomycin)、キタサマイシン(kitasamycin)、ジョサマイシン(josamycin)、ミロサマイシン(mirosamycin)などが動物用に用いられています。
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