燐 Phosphorus P ~ 療法


燐中毒・療法



燐中毒の解毒薬は硫酸銅、テレビン油、過マンガン酸カリで、豚、犬、猫には速かに硫酸銅液を内用します。


その理由は一種の吐剤として毒物を排出させると同時に、胃中で一部分が硫酸と銅とに分解し、硫酸は燐を酸化して無害に変化させ、銅は燐の外表を包被して銅層を作るからです。


古いテレビン油には多量の酸素を吸収し、オゾンO₃の形で含有する故、燐中毒の際粘滑剤に配伍して内用させると燐はオゾンのため酸化されて亜燐酸(H₃PO₃)および燐酸(H₃PO₄)となり、毒性を失うのです。


ただし新しいテレビン油や精製テレビン油にはオゾンを含有せず寧ろ燐を溶解して吸収を容易にし中毒を助けること並びにテレビン油属の薬品はその臭気を肉や乳に附与するから、屠獣および乳用獣には不適当です。


過マンガン酸カリは0.1~0.5%溶液を胃洗滌あるいは内服させますが、これは本剤によって燐が酸化され無害のオルト燐酸となることによります。


療法の第一は毒物の除去であり、燐は比較的長く胃中に残るから時間の経過した場合でも一応はこの処置を行うことが肝要です。


このためには吐剤を与え、胃洗滌を行い、あるいは下剤を用い、化学的乃至医科学的に解毒させます。


吐剤としては前述のように硫酸銅溶液が推賞され、胃洗滌には0.1%硫酸銅液、あるいは0.1~0.5%の過マンガン酸カリ溶液を用い、且つ洗滌後1000cc位胃中に残留しておく。


また吸着剤たる獣炭末の3%浮遊液も用いられ、更に水1ℓに30gの獣炭末を混和し、数回に亘って内服させることもよい。


胃内容物の排除には浣腸を行い、糞便にニンニク臭があれば0.1%過マンガン酸カリウム液でこの操作を反復します。


下剤には塩類下剤を使用しますが、油類下剤には賛否両論がありますが、油類は燐を溶解して吸収を促すから用いない方が安全です。


一般療法としては先ず瀉血を行い、血中の燐を排除し、次でリンゲルロック液の注射をする。これは燐中毒では血液のアルカリ度が減少するから単純な生理的食塩水よりもアルカリ性を呈する栄養液が合理的なためです。


最も重視すべき療法はインシュリンとブドウ糖との併用で、その理由は燐は甚しく肝臓を侵し機能不全を起こすので、この際インシュリンあるいはブドウ糖の単用のみでは何れも肝の脂肪変性を阻止しグリコーゲンの新生を促すことはできません。


しかし両者を併用した場合に脂肪変性を阻止し肝、筋肉などのグリコーゲン新生もされることが判りました。但しこの際留意すべきことは、グリコーゲン生成の材料となるべき含水炭素の供給を充分にしなければならないことで、その為には澱粉、芋類などの流動食を与えることが必要です。


インシュリンとブドウ糖の割合は大体1単位に対し5g程度とされます。中動物では大体5単位を皮下注射し、15分経過後25%ブドウ糖液50ccを静脈内に注射すること1日2回の方法やインシュリン10単位を皮下に注射し15~30分後、40gのブドウ糖を200ccの水に溶解して服用させる方法が考えられますが慎重を要します。


また肝臓解毒ホルモンヤクリトンも試むべき療法です。


その他麻痺の症状特に血圧降下の場合は、興奮剤例えばカフェイン、アルコールなどを与える。而して脂肪含有の飼料は極力避けなければなりません。

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キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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