各部の骨折 ~ 小動物


小動物の骨折



犬では骨盤骨折が骨折全体の20~25%を占めます。自動車事故に基因することが多く、またその大多数は多発骨折を呈します。


合併症には、冒頭に挙げたもののほか、胸郭の損傷と気胸の発生にも注意する必要があります。診断にはX線検査(2方向)と触診および直腸検査が不可欠です。

各部の骨折 ~ 骨盤骨折・大動物
    骨格を構成する個々の骨に生ずる骨折の頻度は、犬では四肢の長骨の骨折が多い。すなわち…

猫でも自動車事故による骨盤骨折が頻発しますが、その場合は、車に撥ねられるよりも、轢かれることが多い。膀胱破裂の有無に、特に注意する必要があります。

保存的治療法

犬が若く、比較的単純な骨折で、骨片の転位がわずかであって、治癒後の変形が軽度と考えられる皮下骨折は、安静と行き届いた看護のみで良くなることがあります。

運動を制限し、糞と尿の排泄を維持するようにつとめます。

寝たきりの動物は柔らかい敷物を厚く敷いた上に寝かせて、褥瘡の発生を防止します。治癒には約6週間を要します。


手術的治療法

骨片の転位が著しい時、骨盤の径が著減している時、寛骨臼が骨折して転位がある時、骨盤骨折のために股関節が不安定になっている時には、手術によって整復と固定をはかる必要があります。

多発骨折では、接近法をいくつか組合わせて手術を行う。また軟部組織の損傷が著しくかつpoor riskの症例が多いから、十分に補液を行うことが必要です。

骨折の発生後、早期に手術を行うほうが整復、固定とも容易ですが、手技には熟練を要します。しかし猫では、ストレスの重複を避けるため、受傷直後よりも2~3日手術を延期するのがよいとされています。

Kirschner副子(外固定)、髄内釘、ワイヤー、骨ネジ、骨プレート(内固定)などによる固定法が適用されます。


腸骨の骨折

腸骨体と腸骨翼の骨折では、ふつう尾側の骨片が前内方へ転位して骨盤腔が狭窄し、また股関節と後肢が不安定になります。

犬では腸骨外側面から接近して、中殿筋と深殿筋を背方へ反転し、骨プレートをネジで止めて骨片を固定します。大型犬では2本の海綿質用ネジで止めることもあります。

また多発骨折には、骨プレートと圧着ネジを併用します。Kirschner副子も使われます。

猫では、背側から腸骨に接近し、ワイヤーによる縫合に、Kirschnerワイヤーの挿入を併用します。


坐骨の骨折

坐骨体の骨折で骨片の転位が見られる場合には、たいてい骨盤の他の骨の骨折および仙腸関節の脱臼(離開)が併発しており、骨盤腔の径の短縮と股関節の不安定を伴います。

犬では後外側面から接近し、髄内釘、ワイヤーまたは骨プレート(2孔)によって固定します。腸骨体の骨折が合併している時には、腸骨体の手術を先に行う。

坐骨結節の骨折には、2本の圧着ネジを挿入して固定する。

猫では、直腸に指を挿入して骨片の整復をはかり、Kirschnerワイヤーで固定します。


恥骨の骨折

恥骨のみの骨折は非常に稀でたいてい腸骨または坐骨の骨折および仙腸関節の脱臼が合併しています。

治療としては、恥骨に特別の処置を加えなくとも、腸骨または坐骨の骨折、仙腸関節の脱臼(分離)を整復固定することで足りる。


骨盤結合の離開

この場合は、内転筋の断裂と仙腸関節の脱臼(離開)を伴い、肢を内転することができず、両後肢が開張します。

軽症では、数日間両後肢の飛節上方を縛って、肢の異常な外転を防げばなおることがあります。重度の場合は、雌では腹部正中切開、雄では旁正中切開によって接近し、恥骨結合と坐骨結合にワイヤー縫合をほどこします。

なお、既往の骨盤骨折のために、骨盤腔の狭窄が著しく、慢性の便秘が続き、さらに二次性に巨大結腸が発生する可能性がある症例では、恥骨結合切開術symphysiolysisをほどこして、その間隙に幅約1cmの骨片を移植してワイヤーで固定する手術を行うことがある。


寛骨臼の骨折

寛骨臼の領域が2~3個の骨片に割れた場合に、犬では整復と固定が可能で、背側から接近し、大転子を切断して、術野をひろげる。

ワイヤー、骨プレートで固定するか、圧着ネジまたは髄内釘を使用する。

しかし、それ以上多数の骨片が生じた時は、手術が困難で、予後は不良であり、場合によっては、大腿骨頭と頸を切除して摘出します。

猫ではこの部の骨折は少ない。

直腸から挿入した指で整復できますが、骨が細小なため、骨プレート、髄内釘またはワイヤーで固定することが難しい。関節内に仮骨が形成され、骨関節炎が継発します。

そのような時には、大腿骨頭と頸を切除します。


骨盤の多発骨折の処置

骨盤にしばしば発生する多発骨折の治療は、患畜の苦痛を軽減し、また治癒後の生活活動の回復にもっとも役立つ個所の修復から着手します。

骨折個所の全部を修復できないことがあります。

手術は一度に全部を済ませるのがよいが、頻雑な場合には数回に分けて実施します。左右両側に骨折がある場合には、一側の手術を全部終了してから、他側の手術に移る。

術後は食欲、排糞、排尿に注意して、清潔に保ちます。敷物を厚く敷いたケージに入れ、初期は運動を制限します。

髄内釘は臨床的に骨の癒合が認められたあとで抜去します。骨プレート、ネジ、ワイヤーはそのまま体内に残しても差し支えない。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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