神経麻痺について
※外科臨床で重視されているもの
a.三叉神経麻痺paralysis of the trigeminal nerve
b.顔面神経麻痺paralysis of the facial nerve
c.肩甲上神経麻痺suprascapular paralysis
肩甲上神経は腕神経叢の前部より発し、肩甲下筋と棘上筋の間を肩甲骨の内面から烏口突起の縁を廻って外側に出て、主として棘上筋・棘下筋に分布する運動神経です。
これらの筋はいずれも負重の際に肩関節が外方に離開するのを防ぐ作用をします。
(ⅰ)神経麻痺の原因
本症は馬に多くみられます。
肩甲上神経は、肩を激しく外後方へ伸展させるような強い外力(たとえば滑走・縛倒・転倒)あるいは胸廓の方への肩の強い内転によって、しばしば激伸や牽引をうける。
またこの神経は肩甲骨下端の前縁を通るため、この部位の打撲・衝突・頸環による圧迫などによって損傷をうけやすい。これらの原因によって神経に変性が生じ、その支配する諸筋の麻痺をきたします。
(ⅱ)症状
神経の損傷の程度によりますが、一般に特有の支跛を呈します。
患肢に負重すると、肩関節が外転して肩が離開し、肩と胸前との間に明瞭な間隙を生じます。しかし肢の挙上前進には支障が少ない。
麻痺をきたした棘上筋・棘下筋などは2~3週で急速に萎縮し、そのため肩甲棘が突出したようにみえる。
筋肉の著明な神経性萎縮をおこしたものは、神経損傷が永久的であることを示すもので、予後は不良です。しかし、萎縮が軽度な時は徐々に回復することがあります。
(ⅲ)治療法
神経の損傷が軽度の場合には、特別の処置をほどこさなくても4~6週で完全に回復することがあります。この際、皮膚刺激剤を使用すれば回復を促進する。
神経麻痺に対する治療法は次のようです。
一般に患部のマッサージ、電気刺激療法が行われます。また温熱療法、皮膚刺激剤の塗擦が実施され、あるいはヨードカリ(5~15g)を内服させることもあります。
筋肉萎縮の永久的なものに対しては、従来、罹患した筋肉の経路に沿って、テレビン油、クロロホルム等量混合液を1mlずつ4~5cm間隔で数ヵ所に皮下注射したり、また串線打膿法が用いられたこともあります。
平坦地で歩行運動を課す。
外科的に神経縫合、神経剥離術neurolysis、神経移植などを行うことがあります。