牛蹄には種々の原因によってしばしば変形が起こり、そのため運動機能が損なわれあるいは蹄病その他の疾患が継発して、牛の経済的価値が低下します。
その主な原因の1つは、削蹄の遅延、運動不足による蹄の自然磨滅の減少ないし欠如によって過長蹄が生ずることです。
しかしそれらの多くは早期に矯正削蹄によって正常な蹄形に戻すことができますが、一方蹄の発育不良、蹄質脆弱、不正肢勢に伴う負重の偏り、栄養障害、肢蹄の疾患、飼養管理の不適切、先天的素因などのため、削蹄によっても矯正が困難で変形蹄になるものも少なくない。
とくに内地で飼養される牛のように放牧が少なく、舎飼が多い場合には、過長蹄および変形蹄の発生率は高い。
主な過長蹄
延蹄、長嘴蹄(鋏状蹄、角笛蹄、交叉蹄)、薙刀蹄(橇蹄)、上靴蹄(開き蹄)
主な変形蹄
平蹄、豊蹄、山羊蹄、狭窄蹄、彎蹄、傾蹄、豚蹄、コルク栓抜き蹄
過長蹄や変形蹄に陥らず、正しい蹄形と肢勢を保持して、牛が生理能力を十分発揮できるようにする衛生対策の基本としてToussaint Raven(1985)は機能的削蹄functional trimmingの意義を強調した。