骨折の二次的合併症 ~ 骨髄炎


骨髄炎(osteomyelitis)



骨髄炎は細菌(ブドウ球菌、レンサ球菌、大腸菌群など)の感染によるもののほか、真菌(Coccidioides immitis, Blastomyces dermatitidisなど)の感染によっても発生し、また咬創などの外傷が原因となり、あるいは血行性におこることもあります。


しかし骨折の際に、骨髄または外骨膜が直接汚染されて発生する細菌性骨髄炎が、もっとも多い。一方、骨折治療のための手術が満足に行われた症例でも、術後に骨髄炎が発生し、経過が長引いて、ついには死亡する例もあります。


またコルチコステロイドの治療をうけている場合、および白血病の症例では、血行性感染がおこるおそれが大きいことに留意する必要があります。


臨床的には、発熱、跛行、局所の疼痛、瘻管の形成などの症状が現れます。


X線写真では、骨柩(involucrum)の形成、腐骨分離(sequestration)などが観察されます。


炎症性の変化は、元来軟部組織にのみ発生するものであるが、骨のハバース管やフォルクマン管の中をはしる血管と外骨膜は軟部組織に属するから、骨髄炎が発生すると、これらの組織もまた冒される結果、骨組織にも病変がおよんで、後にはそれが軟部組織の病変よりも顕著になります。


炎症のために骨内の毛細血管が損傷をうけ、骨が壊死に陥って細かい顆粒状になり、乾燥し、灰白色を呈するようになりますが、これは直接眼で見る以外には判別しにくい。


骨の壊死は、また菌の毒素によって、骨細胞が冒される結果として発生することもあると考えられています。


病機が進むと、壊死骨(片)を取りかこんで、新生した骨組織が骨柩を形成し、壊死骨(片)の分離と進行の遅い液化のために、腐骨分離がおこり、また相対的な密度の差によって、これらの像がX線写真で識別できるようになります。


一般に骨の感染の場合には、骨の生成と破壊がほぼ同程度に進行し、これに対して骨の悪性腫瘍の場合には、生成と破壊のどちらか一方が優勢になる。


骨の感染があまり重度でない時には、骨幹端の海綿質に骨粗鬆症がおこり、髄内釘を使用している場合には、ピンの先端を取りかこむ暗い領域が現れて、骨の崩壊(lysis)を示します。


また骨表面に広い範囲に(骨折個所あるいは術部から遠く離れた部位まで)、骨膜性新生骨の厚い層が形成されます。


これらの変化は感染後、早ければ10~14日で明瞭になります。


開放骨折あるいは手術の際に重度の骨髄汚染がおこった場合には、骨膜の剥離と骨の壊死の結果、骨の断端には骨膜性の骨新生の徴候がなく、それより少し離れた部位に骨が生成されます。


時間がたつと、骨膜性の新生骨は骨折線を跨いで架橋し、大きな骨柩をつくる。皮質の分離した部分は、隣接部位よりも稠密になりますが、これらの徴候は2~3週間後に明瞭になります。


4~6週間後になると、骨の断端の壊死した骨組織は腐骨になり、病巣内に遊離します。腐骨片は隣接の皮質より密度が大であり、また骨膜性の骨新生がおこらない。


まれには膿が貯溜して、骨幹の骨膜が広範囲に剝れて、骨幹全体が腐骨化することがあります。なお、成長期の骨では、骨幹に発生した骨髄炎が、骨端板をこえて骨端にひろがることは少ない。


また骨髄炎が慢性に経過して、骨膜による骨新生がごく少なく、腐骨も形成されず、ただX線像で骨の緻密化が観察される慢性硬化性骨髄炎(chronic sclerosing osteomyelitis)が発生することがあります。


骨の感染は骨折治療の結果としておこるよりも、皮膚の壊死を伴った開放性の粉砕骨折の例に発生することが多いから、そのような症例に骨接合術を行う場合には、感染の成立と拡大を招く危険が特に大きい。


したがって手術の時期を選ぶことが肝要であって、骨折発生後時間がたっている時には、事情が許せば、骨髄炎の発生を見きわめるまで、保存的治療法によるべきです。


しかし、治療期間中に骨に感染巣が存在すること自体は、かならずしも骨折が治癒しないことを意味するとは限りません。


骨髄炎が限局しており、また滲出物の排出が妨げられていない時には、他の部分には仮骨の形成と硬化がおこって、臨床的治癒が得られます。


このような治癒は牛、馬の下顎骨の骨折でしばしばみられることであり、長骨の骨折でも時には得られることがあります。


術後に発生した骨髄炎の場合に、固定が良好であれば、固定装置はそのままのこし、抗生物質の局所的投与と数週間の全身的投与を行うと、骨折の治癒は遅れるけれども、多くは骨性癒合に達します。


骨折が十分になおったあとで固定装置をはずし、さらに1~2日間化学療法をつづけたのち、創を縫合します。


骨に感染巣がある時に、骨折片が十分に固定されていない場合には、処置が難しい。骨接合術に使った固定装置ははずす必要があります。


そのあともう一度骨接合術を行うか、フルピン副子あるいはギプス包帯によるか、それとも固定を諦めるか(上腕骨、大腿骨の骨折で遭遇することがある)は、そのときどきの状況によります。


いずれにしても、骨接合術に使った固定装置を除去する際には、骨髄炎の病巣をよく検査し、ドレーンを設置して、抗生物質による局所の治療を行います。


感染巣が十分になおったならば、多量の海綿質を移植します。


全身的に行う化学療法はもちろんつねに不可欠です。また化学療法は、かならず菌の薬剤感受性試験の結果にもとづいて、薬を選択しなければなりません。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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