骨形成不全症について
離乳後間もない犬、猫に発生し、骨が脆弱でわずかの外力で骨折をおこす疾患です。
従来は骨形成不全症(osteopsathyrosis、骨脆弱症の一つ)として知られていましたが、近時はその実態が骨脆弱症とは異なり、線維性骨異栄養症であるという考えが有力です。
本症は家族的に発生し、親から遺伝的素因をうけ継ぐばかりでなく親の環境にも影響されます。
骨芽細胞の活性が低下して骨膜性骨形成がはなはだしく障害されるため、長管骨では骨長径の成長は軟骨内化骨によって営まれますが、横径の発育が障害されて細長となり、扁平骨は非常に菲薄になります。
骨が極度に粗鬆で脆弱なため、高度に骨折が発生し、時にはその誘因がまったく不明なことがあり、かつその際ほとんど疼痛を感じない。
肋骨は中間で折れ、長管骨は骨幹端で横骨折をおこす。しばしば骨が変形し、それが骨盤におこると便秘する。
脊柱が変形し、肋骨は長期の横臥のために平坦になる。
骨折のあと仮骨が形成されますが、少量でかつ軟らかい。軟組織の骨付着移行部には軟骨が形成される。骨軟骨結合部には「クル病性念珠」ができる。
骨端軟骨が小柱状に骨幹端ないし骨幹まで延長する。それは骨芽細胞でおおわれていますが、類骨組織の形成はまれです。終始、破骨細胞が多数存在する。
正常の皮質はどこにもみられない。ハバース層板系は欠如し、あるいは形成不良です。
骨膜は厚く細胞が多いが、その下には疎な結合織が充満し、時にはそれが粘液様となっています。X線像には骨皮質の菲薄、骨髄腔の拡大、骨輪廓の不正が見られ、長管骨には明瞭な半透明層や、古い骨折治癒像およびそれによる彎曲が認められます。
ただしクル病のような骨端部皮質の肥厚を見ることはなく、また粗鬆な骨梁網の造成もない。
子犬、子猫では遺伝的素因が重視されていますが、離乳後、肉を主食として室内で飼育されるとおこり易い。
おそらくカルシウムおよびビタミンDの欠乏、Ca:P=1:7よりもカルシウムの比が低い飼料などは関係があるものと考えられます。
これに対する適切な治療法はありません。