線維性骨異栄養症または線維性骨栄養障害症(osteodystrophia fibrosa) ~ 原因・症状・診断・治療法



この疾患は馬におこることがもっとも多く、驢馬、騾馬、牛、山羊、豚、犬、猫にも発生することがあります。


離乳後の種々の年齢の馬に発生しますが、大体7歳以降の馬には少ない。

原因:



本症は栄養性の疾患として、クル病または骨軟化症に合併して発生することがありますが、また非栄養性疾患として、二次性の上皮小体機能亢進の際に発生することもあると考えられています。


この疾患は低カルシウム高燐飼料の給与によって発生するものでありますが、たとえカルシウム給与量が十分であっても、飼料中の燐の含有が著しく高い時は、やはり本症が発生する。


したがって両者の比が問題で、Ca:P=1:3よりも高い割合で、十分量のカルシウムが与えられているかぎり本症は発生しない。


穀類および麬の多給は本症の原因となります。


上皮小体ホルモンの関与については、いまだ詳細が明らかではありませんが、クル病または骨軟化症に上皮小体機能亢進が加重される時は、本症がおこる可能性があるとされています。


しかしそれ以外に、カルシウム欠乏の程度、カルシウムに対する燐過剰の程度、動物の年齢、上皮小体の活性・身体発育の速さ・無機質の必要量・飼料中の必要成分の欠乏または不均衡に対する適応能力に関する、動物の種類および個体間の差異などの因子が考慮される必要があります。


線維性骨異栄養症にみられる特徴的な骨の変化は、破骨作用(osteoclasis)による広汎な骨の吸収と、それを補填する結合組織の出現です。


結合織は骨の吸収部を補充する以上に多量に形成されます。なお吸収と線維化以外に、幼若型の骨質の新生が混在します。


この骨質は海綿状、粗鬆で、その間隙には結合織が充満する。


またこの骨質は長期間石灰化せず、あるいは石灰化しても再び吸収がおこり、それらは再び置換されます。


馬のいわゆる「骨軟症」について、ごく初期の骨の変化は、骨髄腔内における造骨性結合織の増生が主であって、それの進展が造骨性細胞層の形成および類骨組織の増生をうながし、かつこれらの骨には骨塩類の沈着低下はあるが、それらの組成には変化がないこと、また病因的には全身的栄養障害の部分的変化としての骨変化であることなどから、いわゆる骨軟症は骨軟化症(osteomalacia)とは別個のものであって、線維性骨異栄養症であると指摘されています。

症状:



臨床的に観察すると、骨の変化は、ことに顔面の骨において著明です。


下顎の歯槽縁が腫脹して円筒状に肥厚し、下顎間腔は狭くなります。ほとんど同時に上顎の臼歯縁が腫脹し、腫脹はさらに口蓋骨、上顎骨、涙骨、頬骨にひろがり、重症では鼻骨、前頭骨にもおよび、口蓋骨の腫脹のために鼻道が狭くなり鼻塞音、呼吸困難がおこります。


口蓋骨と下顎骨の腫脹のため、口腔頬部が狭くなって咀嚼が妨げられます。涙管が閉塞してたえず流涙する。歯が弛緩し、あるものは埋没し、あるものは脱落します。


採食と咀嚼が阻害されます。


飼料を噛まずに嚥下し、あるいは口からこぼす。症状が進むと巨大頭(bighead)となる。


身体の他の骨にも異常が現れれば、それは病機が進行した徴です。肩甲骨の肥厚、彎曲による肩関節の前方転位、軀幹の沈下と胸骨の突出、脊柱の上方または下方彎曲、肋骨の平坦化などがみられます。


骨折がおこりやすいことと、靭帯の裂離(avulsion)は、本症の特色です。


わずかの圧力によって、肋骨、脊椎、長骨に骨折がおこります。肢の下部では、しばしば靭帯や腱が骨付着部から分離する(裂離骨折)。


重症例では骨折も裂離骨折もおこさずに悪液質に陥って、起立困難になることがあります。これらの馬を無理に起立させようとすると、ただちに多発骨折が発生します。


長骨の関節軟骨には常に病変が生じます。これは骨端における強力な破骨作用の結果であって、骨端の骨質のみでなく、関節軟骨の深部にある石灰化された層もまた破壊される。


関節軟骨は薄くなり、その圧迫された表面には変性と糜爛(erosion)が生じます。


馬は初期には歩様が強拘となり、ときどき一過性の遊走性跛行と倦怠を現します。のちには次第に歩行困難となり、ついに起立できなくなります。


食欲を失い、進行性の悪液質と貧血が発生します。


豚においては、クル病または骨軟化症に継発します。飼料中の栄養素の不足が原因となることは馬と同様ですが、ビタミンD欠乏もこれに加わる。


下顎骨がまず侵される。上下の歯槽縁の肥厚および下顎枝の短縮のために頭部は拡大し、また口が閉じずに舌を口外に出す。歯は深く埋没し、かつしばしば傾斜し、歯槽内で動く。


山羊では主に下顎骨に線維形成がおこる。


羊ではいまだ報告されていません。


本症と同様の疾患は、犬、猫にも発生します。しかし、それらは従来、骨形成不全症(osteogenesis imperfecta)と呼ばれています。

診断:



初期においては、診断が困難なことが多く、関節リウマチ、筋肉リウマチと鑑別しにくい。


尿中燐の定量は有効です。


馬では主として、骨硬度検査法が行われます。飯塚式穿刺器あるいは鳥羽式骨硬度計の針を前頭骨に穿刺して骨の硬度を測ります。

治療法:



カルシウムを豊富に含む青草、あるいは乾草を多量に給与するとともに、その他の飼養管理の改善につとめます。


畜舎の衛生的管理をはかり、患畜には日光浴をさせる。


石灰塩類を補給するため、沈降炭酸カルシウム、牡蠣末、骨粉などを飼料に混ぜて与える。


関節痛のある場合には、カルシウム剤の静脈内投与が行われます。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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