支持療法
馬、高価な牛、その他の大動物の骨折、特に開放(複雑)骨折の場合には、破傷風血清を投与することを忘れず、また支持療法(supportive therapy)として、ショックに対しては輸液、輸血によって、水分と電解質のアンバランスを矯正します。
症例によっては、疼痛を緩和し食欲を維持するために、鎮痛薬の投与が必要なことがあります。フェニールブタゾンを使用することが多い。
固定法が適切ならば、疼痛は1週間以内におさまるもので、たいていの患畜は早ければ2日目~3日目に気分が良くなって元気を回復します。
それ以後でも、なお痛みが激しい時には、患部と固定装置を再検査します。
化学療法は、なるべく薬剤感受性試験の結果にもとづいて実施します。骨は、血液循環が他の臓器組織よりも緩慢であるから、抗生物質の投与量を通常の2倍量とし、開放骨折では2週間またはそれ以上つづけます。
ショックの処置としてでなければ、コルチコステロイドは使用しない方がよい。
硬化包帯および接合副子の問題点
これらの固定装置を装着してから24時間後のX線検査と、大動物で1~2日間は起臥時の介助を行うほか、毎日、固定装置の異常の有無を検査します。
固定後数日の間に、跛行の憎悪、患肢の挙上、骨折部以外に顕著な圧痛点の発生、食欲不振、横臥時間の延長などが現れて患畜が固定をいやがる場合は、装着法が適切でないか、循環障害が生じたか、あるいはギプス包帯の亀裂・破損が生じたことを示します。
チアノーゼと知覚麻痺を伴う趾端の腫脹と冷却、疼痛および体温の上昇は、血液循環障害を表します。
循環障害を放置すると、固定包帯上縁の著しい腫脹や壊死の発生など、重篤な結果を招いて悪臭を発し、以後の固定が不可能になるので、ただちに固定包帯をはずして、やりなおします。
腫脹の著しい患肢にギプス包帯をほどこすと、3日~2週間の間に腫脹が減退して固定がゆるむから、やはりやりなおす必要があります。
また多少の差はあっても筋が萎縮して固定がゆるみ、また大動物では蹄尖部が磨滅するので、4~6週間ごとに固定を更新します。
生後1年未満の若い馬・牛では、骨・関節の成長が速いから、4週間以上ギプス包帯をつづけると関節に重度の壊死が生じることがあるため、3週間ごとの更新が必要とされています。