乳頭の非穿通創(non-penetrating teat wound)
泌乳中の牛の乳頭に生じた新鮮な非穿通性の縦創は(たとえば損傷後24時間以内)、非常に小さい創であってもできるだけ縫合する。
皮膚が一部欠損した創あるいは三角形を呈する割創などは、創縁を切除して新鮮にし(辺縁切除術)、形を修正して縦創に変えた上で縫合する。
弁状の皮膚は壊死に陥りやすいから切除する。
しかし横創、ことに乳頭の末端1/3の部分に生じたものは予後が不良です。
縫合後は、抗生物質軟膏の塗布、あるいは抗生物質を含む液を噴霧して創をその膜で包み、また時には包帯をほどこして搾乳のたびごとに更新する。
すぐに搾乳することが難しい時は2~3日搾らずに放置するか、カテーテルを使って搾乳する。多くは2~3日で器械搾乳が可能になります。
しかし、受傷後の経過時間が長い場合、創が著しく腫脹し、乳頭全体が炎症(乳頭炎thelitis)を呈しているもの、あるいはその乳頭の分房に急性乳房炎が発生している例は、縫合に適さない。
また、乳頭の先端部を一巡する皮膚の剥離欠損は処置がもっとも困難な例で、もちろん縫合することはできない。
これらの創に対しては、保存的治療として消炎酵素剤にしばしば浸漬し、抗生物質軟膏を塗布し、包帯をほどこします。
上記のどの場合にも、乳房炎防止のために、乳管洞内に抗生物質を注入する。
乳頭の穿通創(penetrating teat wound)
乳頭の外面から乳管洞にまで達している穿通創の場合にも、可能ならばなるべく早く縫合を試みる。
創縁を切除して、創面を新鮮にしてから縫合することが肝心で、2~8日経過したものでもよく癒合することがある。その際、縫合糸を乳管洞の粘膜上皮に貫通させることを避け、乳頭壁に深浅2層のマットレス縫合をほどこして、二つの創面を全面的によく接着させる。
その際の注意は次のようです。
②粘膜上皮の縫合は乳頭瘻発生の原因になるから行わない。
③創内に縫合糸の結び目をのこさない。
④乳管洞内の血液凝塊を完全に除去する。
⑤無菌手術の原則を厳重に守る。