牧草には全窒素の100分中、硝酸態のものが0.4~4.0%(生草に換算すると0.002~0.02%)含まれ、この程度では差支えありませんが、植物にこれ以上含有する場合があり、家畜は硝酸による中毒を招きます。
その最低限界は固形物中の窒素として0.22%で、これをKNO₃として現わすと固形物中1.5%です。青刈エンバク中にはこの5倍も含まれることがあり、顕著な中毒を起こします。
また最近本邦に見られるものはビートで、これによる被害も報告されています。
植物に含まれるものは硝酸カリKNO₃の形で、生体に入ると還元され亜硝酸nitriteとなり極毒を呈しあるいは飼料蛋白分解物アミノ酸とこの亜硝酸が作用して窒素ガスを発生することがあります。
従来の報告によると牧草よりも青刈飼料や根菜葉、菜などにおおく、その一例を示すと次の通りです。
(1)ソルガムSorghum属…スーダングラス、ジョンソングラス、モロコシなどで、青酸類よりも硝酸類の方がおおいといわれる。
(2)ヒマワリHelianthus…ヒマワリ、キクイモなど。
(3)トウモロコシZea属…青刈トウモロコシでは葉より茎に多く、時にはKNO₃が乾物中2.1%達するという。
(4)エンバクAvena属…青刈エンバクには或る場合は固形物中KNO₃として7.5~14%も含まれるという。
(5)ヒユAmarantus属…アオビユは外国で牧草とされますが、これにも見出されている。
(6)食餌料蔬菜…一般に水分の多い蔬菜中にも固形物中1~10%の硝酸塩を含むものがあります。
これらのうち注意すべきものはビート、大根、カブ、玉ねぎ、カボチャ、キャベツなどで、一時に大量を与えると硝酸塩の限界を超えて中毒を起こすことになります。
したがってたとえ5%も含まれていても、飼料全量の10%位に止めるならば硝酸塩の量は0.5%となり中毒限界に達していることになります。
換言すればこれらを給与する際には飼料を過剰に与え飽食させないことで、飼料固形物中10%以下に限定すべきです。
而してこれらの植物の硝酸含有量は、硝酸態の肥料を施した場合に多く、また、たとえアンモニア態窒素でも土壌の硝化作用の強い土壌やマンガン欠乏の土壌では同様の現象が起きます。