我が国へニワトリが初めて来たのは、民族が南方から渡来したときに連れて来られたものと思われます。これは、その頃の神話にニワトリが出ていることからも考えられるところです。
そのころのニワトリは、まだヤケイ(野鶏)に近いものであったに違いありません。今日でも各地に地鶏として残っているものを見ますと、ヤケイに近いような体形です。
その後になって、大陸との交通が盛んになると、色々な品種が持ち込まれました。軍鶏などは徳川時代になってからシャム(今のタイ)から輸入されたものです。
これは性質が荒いので、それに改良を加えて次第に闘鶏用にしました。今では世界にも稀な闘鶏として知られアメリカなどに輸出されています。
尾長鶏は高知県の特産になっています。特に高知市の近くの篠原村がその産地です。ニワトリの羽毛は、年に1回は必ず羽変わりするものですが、ニワトリの尾の羽だけが抜け変わらないのを発見して、それを固定したのが尾長鶏です。
尾羽は抜け変わらないので、次第に長く伸びて、3m~5mの立派なものになります。先年、ある外国人がこの長い長い尾を見て、これは付けてあるのではないか?と疑って、尾の付け根を良く調べ、確かに生えているものであることを知って、非常に驚いたという話が残っています。
アメリカの博物館でも、この日本独特のニワトリの標本を欲しがっているという事です。標本でも数万円はしますから、生きている長い尾のものは、なかなか高価なものです。今では特別天然記念物として保存されています。
しかし、次第に少なくなりつつありますので、心配されています。なお、高知県にはミノヒキチャボと言って、やはり尾の長いチャボがいますが、これは尾長鶏から作り出されたものでやはり珍しいものとされています。
チャボは、古く中国から渡来したものされています。しかし、我が国に来てから、私たちの好みにあったものが作り出されて、世界でも珍しい観賞用のニワトリになりました。
近年は、チャボの愛好家が少なくなり、その純粋なものも少なくなってきました。
我が国にはこのほかにもコエヨシとかトウマルとか、トウテンコウと呼ぶ種類がいます。これらのニワトリは何れもその鳴き声を楽しむものです。このように鳴き声を楽しむ飼い方は日本独特のものです。
コエヨシは新潟県方面に良く飼われている種類で、早朝から太い声で、力いっぱいに鳴きます。そしてその声の長いものほど良いものとされています。
長いものでは、1声が30秒ぐらいは続きます。
トウマルも良く鳴く種類で、これは身体が大きいので特別に竹で編んだ籠に入れて飼われていました。これに習って作ったのがトウマル籠といって、徳川時代に罪人を護送するときに用いた籠です。
トウマルも良いものは今日では少なくなりました。トウテンコウも身体が大きく、太い声で良く鳴きます。日本鶏にはこの他、小国、薩摩鶏など、各地に残存するものがありますが、これらは今のうちに保存の対策をしなくてはなりません。
日本のニワトリ
日本のニワトリ