ぺっとくすり

雌の生殖器の腫瘍(Neoplasms of the Female Genital System)


雌の生殖器の腫瘍



牛では子宮の腫瘍は稀れで、なかんずく平滑筋腫、線維筋腫、線維腫などが比較的みられ、リンパ肉腫、腺癌の発生も知られる。


腟ではさらにその発生は少ないが、線維腫、線維肉腫、平滑筋腫、リンパ肉腫、癌などの発生がみられている。卵巣の腫瘍もその発生は少ない。


奇形腫、リンパ肉腫、顆粒膜細胞腫などがみられたことがあります。


馬の生殖器の腫瘍ははなはだ少ない。発生する大部分が卵巣腫瘍で、すなわち顆粒膜細胞腫は馬におけるもっとも一般的腫瘍です。


子宮に平滑筋腫、線維腫などの発生が知られています。


犬では、生殖器腫瘍は少なくないが、猫には少ない。卵巣には顆粒膜細胞腫がもっとも普通で、その他線維腫、腺腫、肉腫、嚢腫などが知られています。


子宮には線維肉腫、平滑筋腫、脂肪腫などが一般的で腟・陰門には陰茎と同様な可移植性性器肉腫(リンパ腫)が多く見られます。


その他豚、羊などには腫瘍の発生はきわめてまれです。


特に犬の可移植性性器肉腫transmissible venereal sarcomaは、まだわが国では、俗にポリープなどと呼ばれ、外科摘出手術の対象となることがおおい。


犬の可移植性性器肉腫は交尾により伝播が、また実験的に移植が可能な、まだ本態不明の肉腫です。

症状:



雌犬では腟前庭、とくに陰核周辺や尿道外口周辺に初発することが多い。


この腫瘍は細胞形態学的には比較的未分化性が強いが、時には大した発育を示さず、比較的長く小腫瘍のままにとどまることもありますが、一般には腫瘍としては中等度の発育を示し、また時には急速に発育して腟腔内にポリープ状に成長するか、粘膜下を侵して腟壁に浸潤する。


またまれには全身皮下や皮内、リンパ節、眼窩脂肪内、腸間膜リンパ節、脾臓などに転移し、そのため悪液質に陥ることもあります。


また大した発育を示さない場合には自然治癒もあるようです。


腫瘍は発育の初期または発育の急速なものは充血して鮮紅色を示し、柔軟で出血しやすく、陳旧のものは部分的に線維化をおこしているため、色は淡く、やや硬い線維性に感じられる。


腫瘍の分解産物のために分泌物は特有の腐敗臭があり、血液を混じた不潔な褐色を示すことが多い。


腫瘍の発育が腟腔、腟壁に進行すれば、外陰部は突出し、時には会陰部の皮膚は腫瘍の発育のため裂開して瘻管を形成する。この際は患部の知覚はやや過敏となる。


犬は分泌物をなめて時に食欲不振などになりますが、一般には全身症状は著しくはない。しかし分泌の多い場合や、腫瘍の発育の急速な場合には削痩、貧血などをおこす。

診断:



肉眼的にも診断は困難ではないが、腫瘍表面や腫瘍の一部を掻き取り、圧しつぶし法でスライドをつくり、オルセイン、ダーリア、メチレンブルーなどで染めれば典型的な未分化の円形細胞を検出することができる。


膣内深部の場合には触診によってポリープ状の形態をたしかめ、付着した粘液を同様に検査します。

治療法:



この腫瘍は未分化であるためか、むしろ放射線に対してよく反応する。


したがって300~500rを4~6回、2000~3000rで通常良く治療できる。また⁶⁰Coなどのγ線による照射も効果的です。


腫瘍が小さく、数も少なく、かつ外部から到達しやすい部にある場合には外科的切除が簡単で、腫瘍が膣に広く浸潤し、変形もあり、健康組織との区別が容易でない場合には腟全摘出手術が適応です。


この際同時に卵巣、子宮の摘出を行うことがのぞましい。


化学療法にも反応するが、全身反応が少なく、確実に有効で持続的作用のある薬剤はまだない。なお本腫瘍は卵巣摘除後一時退縮するように見えるが、間もなく再び成長を開始するので、ステロイドとの関係は明らかではない。

キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)