舠嚢炎(navicular disease, podotrochlitis, bursitis podotrochlearis) ~ 原因・症状・治療法

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本症は深屈腱と舠骨後面との間に存在する滑液包(舠嚢)の炎症です。

舠嚢炎の原因



踏創によって舠嚢に異物が刺入した場合に発し、また肢勢・蹄形の不正(主に起繋)や激労・急激な方向転換の反復によって深屈腱が異常に牽引されたときなどにおこります。

舠嚢炎の症状



踏創により舠嚢に化膿性炎症を発した場合は、疼痛が顕著なため、突然跛行(支跛)を呈し、駐立時には蹄尖で負重するものが多く、蹄の背屈運動をきらい、指動脈拍動の強大および蹄温の上昇がみられます。


検蹄器による鉗圧に対してきわめて鋭敏です。X線検査は本症の診断上特に必要です。


化膿性炎症が周囲組織に蔓延して憎悪するときは、発熱その他の全身症状を伴います。深屈腱の牽引にもとづく慢性の無菌性舠嚢炎は前蹄に多発し、徐々に症状を現すものです。


駐立時には患肢をやや前方に出して負重を免じ、運動時の歩様は強拘で蹉跌(離地または着地の瞬間に蹄尖が地面に衝突する)しやすく、軽度の支跛を伴うものがおおい。


球節の沈下が不十分となり、陳旧のものでは舠骨が粗鬆になり、蹄形の縮小・挙踵・蹄冠の膨隆・異常蹄輪などがみられ、鉗圧に対し、蹄底の中央部で疼痛反応を示します。


また蹄温の軽微な上昇と持続的な跛行が認められ、患肢の肩の筋肉に不働性萎縮を見るのがふつうです。


本症は病変が深部であり、また初期に看過されやすいから、診断には診断的注射(掌神経の伝達麻酔)およびX線検査を併用します。

舠嚢炎の治療法



異物刺入に起因したものは、踏創の治療法に準じて治療します。


深屈腱の牽引にもとづくものは休養させ、その緊張を緩和させるために、削蹄によって蹄の角度を高くし、上彎を設け蹄の反回を良好にし、あるいは厚尾蹄鉄を装着し、蹄冠部には皮膚刺激薬を塗擦し、時には焼烙を行います。


最後的療法として掌神経掌枝の切除術が行われることがあります。

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キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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