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脊髄障害(脊髄症)


脊髄障害(myelopathy)



脊髄障害(脊髄症)は、脊髄の機能障害か病的変化、またはその両者を包括する一般的な用語ですが、しばしば炎症(脊髄炎myelitis)に対する非特異的な病変を指して用いられます。


播種性脊髄障害disseminated myelopathyと横断性脊髄障害transverse myelopathyとに分けられる。


播種性脊髄障害は、長い脊髄の全長または大部分がおかされる場合で、家畜では遭遇することが少ない。


その1つ、犬の脊髄出血hematomyelia(または進行性出血性脊髄軟化progressive hemorrhagic myelomalacia)は、急性の椎間板ヘルニアの際に突出した髄核の影響で、脊髄の全長にわたって硬膜下および脊髄内に出血がおこり、それが進行して脊髄組織の軟化、崩壊にいたるもので、3~6日以内に死亡するといわれています。


その発生病理については不明な点が多い。


その他には、各種の家畜に見られる感染性脊髄炎infectious myelitisがあげられます。


これに対して横断性脊髄障害は、主として脊髄のごく一部が限局性に圧迫されることによって発生するもので、髄節性に知覚過敏、運動麻痺、筋萎縮などが帯状に現れる。


また伝導線維が遮断されるため、障害部以下に運動、知覚、自律神経系の障害が認められる。


横断性脊髄障害の神経学的徴候neurological signsは、病変の存在する場所によってきまり、原因によってきまるものではないから、神経学的徴候から原因を究明することは困難です。


しかし横断性障害がおこった脊髄のレベルを決めることは可能であるから、例えば、頸髄下部の部分的な横断性脊髄障害という暫定的な診断のもとに、原因を究明するため現におこっている病状について、さらに他の知見の収集につとめるなどの手順は診断の要諦です。


横断性脊髄障害の多くは、きわめてデリケートな組織である脊髄が、脊椎に生じた損傷、炎症、血腫、腫瘍、奇形などによって圧迫compressionを受けて発生する。


その結果現われる徴候は圧迫の程度によって異なり、圧迫が軽度~中等度の時は自己受容性感覚proprioceptionたとえ位置覚position senseが脱落し、重度の時は随意運動の減退~消失や反射の異常がおこり、さらに最重度になると痛覚が喪失する。


痛覚の喪失は深刻な徴候の1つで、予後をおおきく左右する。


痛覚喪失後24時間以内ならば、ただちに適切な治療を加えることによって治癒する例が多い。24~48時間を経過すると、即時の治療によって回復する例もありますが、治療の成功率は24時間以内の例にくらべてはるかに低くなります。


48時間以上経過しているものは回復の見込みがない。


また愛玩用の小動物では自己受容性感覚の異常が長くのこっても日常の生活活動に支障がないが、これに対して大動物では生命よりも運動能力の存否が問題です。


完全な運動麻痺と脊髄反射の亢進を呈する患畜でも、原因が除去され十分な治療と看護があれば回復に向かうが、回復には3ヶ月の時間が必要です。


ただし、対麻痺paraplegiaないし四肢麻痺tetraplegiaの患畜の看護には著しい困難が伴い、仮りに予後が良好と判断されても、長期の寝たきりの動物(downer)におこる合併症は克服しがたく、また致命的でさえあります。


寝たきりの患畜の看護には、飲水と飼料の給与、褥瘡の予防および排糞と排尿の介助が肝腎であって、その間畜主の負担は多大です。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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