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脊髄炎 ~ 髄膜炎


脊髄炎(myelitis)



小動物におこる横断性脊髄障害の症例では大多数において脊髄炎が発生している。


しかし発熱もせず、血液検査所見にも変化がないなど、臨床徴候は他の原因による横断性脊髄障害と区別できない例が多い。


転移性に発生した椎骨の感染(感染性椎骨炎infectious spondylitis、椎骨の骨髄炎)によって椎骨が破壊され(椎間板の破壊を合併することが少ない)、これに対して一方では骨の新生がおこって脊髄を圧迫するため、横断性脊髄障害の種々の臨床徴候(体力減退、体重減少、後肢の協調運動失調、後腹部の圧痛、時に腰椎部の圧痛など)が現れる。


したがって、他の原因による跛行、腹痛、背痛などとの鑑別診断のため、X線検査が不可欠。


X線写真では骨の崩壊と新生が混った虫食い像moth-eaten appearanceが観察される。さらに脳脊髄液の検査を必要とすることもあります。


犬では、けんかによる背線の外傷、腰に刺った植物のノギや棘の迷入などに起因することが多く、原因菌としては、化膿菌のほか、Coccidioides, Blastomyces, Cryptococci, 結核菌、Brucella canis, Corynebacterium, Spirocerca lupiなどが報告されています。


植物のノギや棘の迷入による場合は膁部の化膿巣に通じる瘻孔が観察される。


治療の効果はかならずしも大きくない。初期のあまり重篤でない症例には、外科的に病変部の骨を掻爬し、これに長期の強力な化学療法を併用する(最大の用量を1ヶ月間つづける)。

髄膜炎(meningitis)



特異的に中枢神経系を侵す病原体のほかに、どこにでもいる細菌によっておこる感染症の患畜において、時々髄膜炎が併発することがあります。


なかにはさらに髄膜脳炎、髄膜脊髄炎に拡がることもある。


原因菌としては、ふつうの化膿菌(レンサ球菌、ブドウ球菌、化膿桿菌、壊死桿菌、緑膿菌)のほか、体内の他の病巣から転移する例として大腸菌、結核菌、サルモネラ、放線菌、肺炎菌、パスツレラ、ヘモフィルス、レプトスピラ(L. pomona)、鼻気管炎ウイルスなどが報告されています。


大多数の例では、血行性または敗血症性-転移性に髄膜の感染がおこりますが、特に脊髄軟膜が侵されます。


原発巣は子牛では臍炎(大腸菌、肺炎球菌、パスツレラ)、成牛では乳房炎、子宮炎、異物性腹膜炎、肝膿瘍、肺や腸の疾患です。


菌の種類よりはむしろ病変の拡がりと程度が問題となります。


限局性の炎症および膿瘍形成の場合には、病変は潜行性に進行し、あまり発熱もなく、症状は長期間変わらないか、または再発性ないし緩慢な進行を示します。


これに対して広範囲の髄膜炎(大腸菌、化膿菌、肺炎球菌、パスツレラの感染による)の場合は、しばしば脳と脊髄の軟膜が両方とも広くおかされて、発熱、顕著な全身障害、明瞭な中枢神経症状が現れる。


すなわち、起立時に頭が後方にのけぞる、耳が後に倒れる、目を見開く、斜頸、頭を振子のようにふる、項から背にかけて硬直がおこる、牙関緊急、四肢の伸展強直ないし肢勢の異常、運動を嫌う、時々興奮と痙攣発作。


これらは頭や頸の受動運動を課したり、頭蓋や脊柱を叩くと強くなり、激しく抵抗し、あるいは突然倒れる。歩行運動は失調を呈し、歩様は短切、なかには周回運動を行ったり、壁に頭を押し付ける。


強制的に運動させるとすぐに脈拍数と呼吸数がふえる。次第に食欲不振におちいる。


病勢が進行すると、起立不能になり、初めは胸骨臥位、後には横臥して体が平たくなり、頭を後ろにそらす。散瞳、盲目、眼球震盪、流涎、歯軋り、呻吟がしばしば現れる。


四肢を伸展させ、受動的にはまげることができますが手を離すとすぐに伸長する。緊張性-間代性の痙攣発作がおこることがあります。


次第に削痩、脱水に陥って2週間前後で死亡する。さらに重症の場合は痙攣、昏睡を呈し、数時間ないし数日の経過で死亡する。


特異的に脳脊髄を侵す感染病、脳・脊髄の損傷、グラステタニー、鉛中毒、ケトージス神経型、その他の疾患との類症鑑別が必要です。


すでに寝たきりの患畜および意識が高度に混濁したものは救えない。


症状がそれらより若干軽い場合は、敷ワラを厚く重ねた単房に収容して、人工栄養、牛体の反転などの看護を尽し、抗生物質、コルチコステロイド、ビタミンB₁などを投与する。


しかし、それらの処置の効果が4~6日以内に現われなければ、それ以上治療を続けることは無用です。なお、初生子牛の敗血症性疾患の予防には十分注意する必要があります。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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